また、脳梗塞の予防のためには原因となる持病のコントロールが大事で、脳動脈瘤(りゅう)や腫瘍(しゅよう)があれば破裂を予防する治療や切除が必要になる。

 続いて、慢性的に進行する症状と脳の関係について見ていこう。

 ヨシコさん(50代)が「見え方がおかしい」と感じ始めたのは、40代のとき。今までなら何とも思わなかった太陽の光を、やけにまぶしく感じるようになった。しかも、その症状は日を追うごとにひどくなる。曇りや雨でも光がまぶしく、常に目を細めなければならない。薄目で見るためか視界が狭まり、外出先で転びそうになることもあった。

 結局、眼科をいくつか渡り歩いて判明した病名は、「眼瞼(がんけん)けいれん」というもの。目の周りの筋肉が過度に緊張して正常なまばたきができなくなった状態をいい、まぶしさや目の乾きなどの不快感を伴う。

「見え方の異常や見えにくさは、眼球に問題があると思う人が多いでしょうが、実は原因が“脳”にあることも少なくないのです」

 こう話すのは、『その目の不調は脳が原因』の著者で、眼科医の若倉雅登さん。井上眼科病院(東京都千代田区)で約30年にわたって「目と脳の問題」に向き合ってきた。

「眼瞼けいれんでいえば、目から脳につながる神経回路のどこかに問題が起こったため、まぶたに過緊張が生じたり、目の不快感が表れたりすると考えられています。この場合、無理して目を見開いて見ようとすると、頭痛や肩こり、吐き気などの症状が出るので、なるべく目を大きく開けない生活を送ろうとします。当然、そうした生活は日常生活に支障をきたしストレスになりますから、抑うつや不眠などの精神症状をもたらしやすいのです」

 眼瞼けいれんでは、下記のような症状が見られる。当てはまる項目が3個以上あれば、この病気の可能性が高いという。

【眼瞼けいれん自己診断】(清澤医師の資料を元に編集部で作成)
・まばたきが多い
・外に出ると、または屋内でもとてもまぶしい
・目を開いていられない
・目が乾く、しょぼしょぼする、痛い
・人混みで人やモノにぶつかる、ぶつかりそうになる
・電柱や立ち木、停車中の車などにぶつかったことがある
・太陽や風、階段の上り下りが苦手で、外出を控えている
・危険を感じるので、車や自転車の運転をしなくなった
・手を使って目を開けなければならないときがある
・片目をつむってしまう
○の数 0個:正常、1~2個:眼瞼けいれんの疑い、3個以上:眼瞼けいれんの可能性が高い

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