尾木:男の子がおとなしくなったのは確かです。母親と入浴する男の子が増え、親子が共依存関係になり、なかなか精神的にも性的にも自立できないことを、ぼくも本に書きました。

佐藤:男教育というものはやっぱり必要なんでしょうねえ。平等平等と言ってると、男がヘナヘナになる。

尾木:男の立場から見ると、家父長制度のピラミッド社会ができてた時代は、男性が力を持ちやすかった。しかし戦後、男女平等になって、システムが壊れ、古い男性優位の社会そのものが変化してきています。男は仕事も家庭も求められる時代になって、働き方改革も叫ばれてはいるけれど、現実は程遠い。すごく大変だと思いますよ。

佐藤:昔の父親は権威を持ちながらも、孤独だったと思います。子どもにとってお父さんは怖い人だった。絶対自分は正しいと思っている頑固な存在で、怖がられ煩(うるさ)がられるばかりで愛されなかった。子どもが成長していく過程にはそういう抵抗物が、必要だと思うんです。

尾木:子どもにとって、時には壁も必要です。とくに思春期は親ともくり返しぶつかって「なにくそ」と子どもは鍛えられて、その中で自立していく。

佐藤:昔の親は「正直な人間になれ」とか「人の物を盗むな」「貧乏は恥ではない」「困っている人を助けよ」などと、素朴なことをくり返し教えるだけでしたね。素朴だけど、生きていく上での基本です。

尾木:実は国際比較のデータがあるんですけど、そうして生活規律や社会ルールを最も親から教わってない国は、日本なんです。「人をいじめちゃいけない」という当たり前のことを、親に言われたことがない子が、日本には大勢いると思います。

佐藤:親子仲良しごっこの時代ですよ。今は。

尾木:頑固でなくてもいいけど(笑)、言わなきゃいけないんです。親が子どもに教えなきゃいけない基本的な社会ルールとか、全然伝わってない。

佐藤:前から疑問に思ってたんだけど、いったい教育委員会って何をするんですか? なぜ必要なんですか?

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