大きな被害をもたらした台風19号。上陸してから1週間以上たったいまでも、多くの人が避難生活を強いられている。記録的な大雨による水害が各地で相次いだが、改めて注目されたのが高層マンション(タワマン)のリスク。浸水で電気や水道などのライフラインが長期間途絶えたところもあった。高層階に住む高齢者らにとっては、「命の危険」もある。危険性を把握し、災害に備えることが大切だ。
今回の台風では、川崎市中原区の武蔵小杉駅近くのタワマンなどで被害が目立った。
近くの多摩川の堤防は決壊しなかったが、支流があふれたり、下水管を通じて水が逆流したりした。大量の雨が行き場を失う「内水氾濫(ないすいはんらん)」が起きたとみられる。
地下に水が流れ込み、電気設備がダメになるタワマンが相次いだ。停電で水をくみ上げるポンプも動かず、電気や水道はストップ。エレベーターも動かないため、高層階の住民は時間をかけて階段を上り下りするしかなかった。
水が引いても電気設備の復旧工事には時間がかかるため、停電は長期化してしまう。上陸から1週間たった10月19日時点でも、一部で停電しているところがあった。個別の建物被害のため、行政が十分把握できていない面もある。川崎市の担当者は次のように話す。
「中原区周辺では停電は10月21日現在ですべて復旧しているはずですが、個別の建物で電気が通じているかどうかは配電盤などの問題もあります。高層マンションでエレベーターが動いているかどうかなどについては、把握できていません。断水も市水道局からは解消されたと聞いていますが、個別の建物については同様です」
タワマンは地震や水害といった自然災害に強いイメージがあっただけに、驚いた人もいるだろう。防災コンサルタントで1級建築士の三舩康道さんは警鐘を鳴らす。
「高層マンションなどでは水害は関係ないと思っていても、想定外の被害が起きます。停電すれば高層階は孤立し、取り残された高齢者らは命に関わります」