昨年の熱中症による死者数は1500人を超えた。救急搬送された人数は7月が6月の10倍以上の約5万4千人と一年で最も多かった。いよいよ夏本番、熱中症対策には、体温を下げるために汗をかきやすい体を作る「汗腺トレーニング」が有効だという。そんな「汗活(あせかつ)」で夏を乗り切ろう!
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汗の専門家、五味クリニック(東京都新宿区)院長の五味常明医師は、汗と熱中症の関係性を説く。
「人間の体で、熱を下げる唯一の方法は『発汗』です。汗は蒸発するときに、気化熱で体温を下げます。汗が止まってしまえば、熱を放出できない。それが熱射病(脳障害)です。熱中症で運ばれてきた人で、汗をかいていない人は、重症です」
汗の水分の供給源は、血液だ。汗腺は、血液から血球成分をのぞいた血しょうをくみ取る。血しょうに含まれるミネラルやニオイのもとになる物質を、ろ過して血液に戻し、その残りを汗として体の外に放出する。
「かいてもすぐに蒸発するようなサラサラ汗は血しょう成分が薄く、良い汗ですが、大粒でなかなか蒸発せず肌にべとっと残っているネバネバ汗は濃度が濃くて、悪い汗。アンモニアとか乳酸などのニオイ成分や雑菌のエサとなる皮脂などを含んでいるため、臭いんです。しかも蒸発しづらいので、結果、体温を下げにくい」
こんな汗をいつもかいている人こそが熱中症になりやすいのだという。
極度の脱水状態になると、体内に必要な酸素を回すために、脳や心臓などの臓器に血液が回され、皮膚への血流不足になる。結果、汗が出なくなる、というわけ。
一方、「ふいても、ふいても汗が出る」というのもある。その場合は、汗が体温を平熱に戻せなくなっているためで、平熱になれば汗はおさまる。
肌表面が少ししっとりする程度に、汗が少し皮膚に残っている程度が理想なのだという。そのためにも、
「汗の代わりに水をつけましょう。水分補給だけでなく『汗補給』も大切。ペットボトルで水を持ち歩き、飲み残した水分を両手のひらに広げて、ぺたぺたっと、皮膚をぬらすだけでいい。汗が出づらい高齢者はとくにやってください」(五味医師)