人当たりがよく、誠実そうに見える業者の中にも、平気でウソをつくワルが潜む。記者である私にも見極めるのは難しい。提供される情報の真偽も一つずつ自分で見極めながら、物件の良し悪しを推し量るしかない。

 前のめりにはならず、いつでも引き返せる余裕を持つことも大事だ。曖昧な説明には決して妥協せず、不安や疑問がすべて解消されるまでとことん突き詰める。雰囲気に流されてハンコをつくことだけは絶対に避ける。

 第四に、身の丈に合った投資にとどめることだ。

 投資にはリスクがつきもの。そう頭ではわかっていても、不動産投資の世界に踏み込むと、あまりに多くの人が大きすぎるリスク(=過大な借金)を背負い込んでいる。業者が家賃を払わなくなる、多額の修繕費が発生する、思いどおりに空室が埋まらない……など、不動産の世界ではよくある事態が起きた途端、首が回らなくなってしまう人がここ数年のブームであまりに多く生み出された。

 多額の借金で過大なリスクを背負うのは、まるで自分の人生を家族の生活とともに賭すようなものだ。手にできるかどうかもわからない「富」に賭けるほど、価値の低い人生などあるはずがない。投資の目的が「老後の安定に向けた資産形成」にあるのなら、失敗しても自身の貯蓄がいくらか目減りし、泣いてやり過ごせる範囲をリスクの上限とすべきだ。返し切れないほど多額の借金は決してすべきではない。

 最後に、将来の資産形成に向けて新たなリスクを背負うときには、親子や夫婦、信頼できる仲間とのコミュニケーションを密にすることも大事だ。意見の不一致はあるとしても、投資の前提となる「データ」は多くの目にさらすことでウソやごまかしを見破れる可能性が高まるからだ。

 投資を決める前に「手間」や「面倒」を惜しまずに努力することが、失敗して後悔するリスクを減らすための最大の武器となることも覚えておこう。(朝日新聞記者・藤田知也)

週刊朝日  2019年7月5日号より抜粋