こうした全身疾患や認知症を予防するためにも、日々の口腔ケアが重要です。若林歯科医院には、定期的にメンテナンスをしに来られる男性の患者さんがいます。その方も最初は歯周病で、当時48歳でした。健康な人なら3ミリ程度の歯周ポケットの深さが、7~8ミリもありました。歯磨き指導や歯石取りなどで4カ月間に11回の治療を通じて、なんとか奥歯をきれいに保てました。その後も27年間で81回、4カ月に1回必ず通院され、75歳になった今も元気に通われています。

 日常の歯磨き(セルフケア)と、歯科医院でのクリーニングや歯石取り(プロフェッショナルケア)、この両輪でケアを行うことが最大の歯周病予防になるのです。

「いい歯医者」の見分け方を教えてほしい、とよく質問を受けます。その答えの一つは、治療計画を説明してくれるかどうかです。まれに「これはどういった治療なのですか」と質問すると顔をしかめるなど、説明を嫌がる歯科医師もいます。そうではなく、この治療はどういった治療なのか、自由診療なのか保険診療なのか、どのぐらいの日数がかかるかなど、具体的な計画を教えてくれるのがいい歯医者です。治療中に手鏡などを手渡して歯の様子を見せてくれるのもいい医者です。治療結果の、自信の表れですから。

 こういうお話をすると、「歯を抜こうとする医者はいい歯医者なのですか」と聞かれることがあります。答えは「専門家によって抜く基準は異なる」です。例えばインプラント治療を専門とする歯科医師は、悪くなった歯が健康な歯に悪影響を及ぼさないように、抜いてインプラント治療をしようと考えます。一方、歯周病の専門医は、最後まで患者さんの歯を残すことをあきらめません。少しでも可能性があれば、抜けそうな歯の両隣と合わせて補強する治療(ブリッジ)など、手を打つことを考えます。

 こうした情報はインターネットだけではわからないもの。ぜひ、セカンドオピニオンとしていろいろな歯科医院に行ってください。お口の健康を見直して、豊かで楽しい人生を送りましょう。

(構成/アエラムック編集部・白石圭)

週刊朝日  2019年6月28日号