6月12日に開催された出版記念講演会 (撮影/上溝恭香)
6月12日に開催された出版記念講演会 (撮影/上溝恭香)
若林健史歯科医師/医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事 (撮影/上溝恭香)
若林健史歯科医師/医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事 (撮影/上溝恭香)

 歯周病専門医の若林健史歯科医師による著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』の出版記念講演会が6月12日、朝日新聞東京本社・浜離宮朝日ホールで開催された。口のケアが全身の健康につながる重要性や、歯科医師選びのコツを語った。講演の一部をお届けする。

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 歯がなくなる原因の第1位は何か、ごぞんじでしょうか。多くの方はむし歯だと思うかもしれません。むし歯が原因の抜歯は全体のうち32.4%です。しかし一方で、原因の41.8%を占める病気があります。それが歯周病です。多くの人は歯周病で歯を失うのです。人間の口内には300~700種類の菌が存在すると言われていますが、その中で最も悪さをするのが歯周病菌というわけです。

 歯周病は「サイレントディジーズ」、静かなる病と呼ばれます。痛みが出るむし歯と違い、歯周病は知らないうちに忍び寄ってきて、ある時突然歯が抜ける。初期段階では自覚することがなかなか難しい病気です。しかし、予防をすることができる病気でもあります。それはむし歯と歯周病になる過程を見ればわかります。

 むし歯は、食べかすをむし歯菌が分解することから始まります。分解された食べかすは歯垢になります。歯垢は糖分を得ると乳酸を生み出し、それが歯の表面のカルシウムやリンを溶かしてむし歯になります。

 一方、歯周病も、食べかすに歯周病菌がつくところから始まります。食べかすが分解されて歯垢ができると毒素を吐き出し、歯茎が腫れます。この段階ではほとんど痛みはありません。進行すると歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)が深くなり、やがて歯を支える骨が溶け、歯が抜けます。これが歯周病です。

 つまり、むし歯も歯周病も、不十分な歯磨きで食べかすを放置し、定期的な歯のクリーニングとメンテナンスを怠ることから始まっているのです。では歯周病になっているかを自分で判断するにはどうすればよいでしょうか。

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