――徳島県美波町を舞台にした新作映画「波乗りオフィスへようこそ」への出演も、阿木さんの一押しで決まった。

 オファーをいただいたときは「どうしよう」と思ったんです。漁師の役なんだけど、僕は船が得意じゃないんです。酔っちゃうから。それに徳島弁という関門もある。で、阿木に「お断りしようかな」って相談したら、「やったほうがいいんじゃない。脳トレになるから」って(笑)。

 現地に着いたら「あれ? ここ見たことあるな」と。実は以前、アウトドアライブとドラマのロケで来たことがあった。縁があったんですね。ウミガメが産卵するような海があって、自然も人も素晴らしい。引き受けてよかったと本当に思いました。

 僕の役は東京から起業に来た若者を助ける「地元のまとめ役」のような存在。僕自身も音楽の現場で、自分より若い人たちとどうやってうまくやるかを考えて、やってきましたからね。夜も時間があればみんなを誘って飯食いに行き、現地の人ともたくさん触れ合った。映画に「ここには学びと教えがあるんだ」というセリフがあるけど、まさにそれが撮影現場にありました。

――73歳。次世代に継いでいくもの、を考え始める年齢でもある。

 最近は少子化で小中学校が合併するし、市町村も合併するでしょう。だから新しい校歌や町歌のオーダーが増えてるんです。そういう歌はいわゆる流行歌と違って、長くいろんな人に歌い継いでもらえる。ヒット曲を書くのとは全然違う気持ちで作れるんです。阿木と二人で、どんどん引き受けていこうね、と話しているんです。

(聞き手/中村千晶)

週刊朝日  2019年4月26日号