物語が始まる昭和21年、なつは9歳。広瀬が登場するのは第3週からだ。高校卒業後に上京、アニメーターを目指すという時系列を史実と照らし合わせると、興味深い物語が見えてくると碓井教授は言う。

「なつが上京しているタイミングの昭和31年は、史実で言えば東映動画(現東映アニメーション)の発足年。そして、その7年後に宮崎駿さんが入社するんです。おそらくなつは、宮崎青年の先輩になるのでしょう。日本のアニメの草創期を見る楽しさもあります」

 はたして宮崎青年の登場はあるのか。

「事実、草創期には何人かの傑出した人物がいました。当時の時代背景を参考にしていますので、この登場人物がもしかしたら……というような視点でも楽しんでもらえるかもしれませんね」(磯氏)

 あくまでフィクションとのことだが、架空の人物だからこその楽しみもある。

「実在の人物を描く“実録路線”の物語は、モデルの実人生だから大きく逸脱することができない。その意味で、架空の人物である“広瀬なっちゃん”がどんな歩みを見せるのか注目したいです」(碓井教授)

(本誌・秦正理)

週刊朝日  2019年4月12日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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