ところが、大人になると好みが変わり、体質も変わる。現在、ぼくは喫煙こそしないが、たばこのにおいは、今は全然気にならない。相当な悪路でも車酔いもしない。千葉県の亀田総合病院に勤務していたときは、房総半島の一番南からバスでよく上京した。これがすごい悪路で、しかも運転手の運転は総じて荒かった(少なくとも当時は)。でも、ぼくはパソコンで仕事をしながらバスに乗っていても全然酔わなかった。うちの奥さんは車酔いがひどくて房総半島のバスではしばしば吐いていた。人それぞれということだ。


 
 とはいえ、今でも服についたたばこのにおいは、ぼくは嫌いだ。出張で泊まるホテルは絶対に禁煙ルームのほうがいい。手違いで喫煙ルームに泊まらされるときは、とてもつらい。 

 なんですかね、焼肉屋で焼肉を食べるときはにおいが気にならないのに、食後に服や体についたにおいは悪臭になるって感じかな。においも文脈が大事ってことかもしれない。
  
 現在のぼくはたいていのたばこのにおいは気にしない。子どものときの苦痛もあり、たばこのにおいが苦手な人の気持ちもよくわかるけど。まあ、喫煙者と仕事をしたり、喫煙習慣のある患者の診療が苦痛だったりしないのは、医療者としてはラッキーだ。医者の中にはヒステリックにたばこが嫌いな人がいて、そういう人は「たばこのにおい」=「耐え難い、がまんできない」と自分を暗示にかけているというか、呪いをかけている人もいるようにぼくには思える。
  
 ぼくにとっては葉巻のにおいはむしろ好ましいにおいだ。それは多くのシガー・ラバーに共有されている感覚なので、とくにぼくが異常者というわけでもないだろう。将来、キューバにも行って本場で葉巻を楽しんでみたいとも思っている(行ったことがない)。まあ、ぼくの場合は、葉巻をたしなむといっても数年に1本くらいのペースなので、健康被害もほとんどゼロだと思うけど。
  
 しかしながら、ぼくが絶対に葉巻を吸わないセッティングもある。それは、ワインを飲むときだ。ぼくは、葉巻を味わうときは絶対にワインは飲まない。また、ワインを飲むときは絶対に葉巻は吸わない。

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たばことワインはダメでも、他のお酒なら合う?