現金、預貯金、株式、投資信託、不動産、自動車……。相続財産として評価する対象は多岐にわたり、その合計額次第で相続税の手続きをとることになる。

 国税庁によると、17年に相続税の課税対象となった人(被相続人)は11.2万人。亡くなった人に占める課税割合は8.3%だった。相続税を算定する際の基礎控除額が15年に引き下げられて以降、相続税はより多くの人が支払う税金になった。課税割合は、14年の4.4%から15年に8.0%とはねあがっている。

「相続で注意したいことは、借金などのマイナスの財産のほうが多い場合です。プラスとマイナスの財産を両方ともに相続放棄する、またはプラスの財産の範囲内で負債を引き継ぐ限定承認する、などの判断を3カ月以内に家庭裁判所へ申し出なければならないのです。放棄の前に、財産を一部でも処分してしまうと手続きできなくなります。死後に故人の預金口座からお金を引き出すと、後日、大きな借金が見つかっても放棄できない。遺族が引き継ぐことになりますので、気をつけましょう」(井戸さん)

 まず遺言書の有無を確認しよう。あれば、それに沿った遺産相続をする。なければ、法定相続人全員で遺産の分け方を決め、遺産分割協議書をつくる。協議書では、誰が何を相続するかを記し、相続人全員が実印を押す。特定の用紙はないが、税理士に依頼するケースが多い。相続人はそれぞれ協議書を保管する。

 必要な手続きはほかにもある。年金以外に不動産収入などを得ていて確定申告していた人は、死後に相続人らが準確定申告をしよう。故人に代わり、所得税などを税務署に申告する。(村田くみ)

週刊朝日  2019年1月25日号より抜粋