畠中さんは義母が亡くなる前に、葬儀会社のパンフレットをいくつか取り寄せていた。これが役に立ったという。

「その以前に義父を亡くしたときは、病院から紹介された業者に任せっきりで、家族葬の割には費用が多くかかってしまいました。義母のときは同じ家族葬でも、義父のときの3分の2ほどに抑えることができました」

 じつは筆者(村田)も、11年前に父を看取ったとき、葬儀の段取りに戸惑った経験がある。父が危篤に陥ると親戚から葬儀について心配され、「実はまだ何も手をつけていない」と打ち明けた。親戚の助言で事前に葬儀会社に相談すると、「病院では真っ先に車の手配を聞かれます。『手配してあり、結構です』と断ってください」と言われた。

 父の死後、病院内の霊安室には案の定、葬儀関連業者が白衣に身を包んで待ち受けていた。車や斎場の準備を聞かれたが、手配済みと答えて迎えの車に父を乗せた。葬儀代は病院からの車代や祭壇などがセットのコースで、お布施などを除き40万円ほど。事前の知識がなければ、病院が紹介する業者に任せきりで高くついたかもしれない。

 葬儀を終えたら、市区町村役場に出向いて必要な手続きを進めよう。死亡届を出すと、故人の戸籍に「死亡」と記され、住民票が削除される。故人が世帯主であり、同居の家族が2人以上いた場合は14日以内に世帯主変更届を提出しよう。

 戸籍関連では、復氏届や姻族関係終了届などの手続きもできる。夫が亡くなって妻が結婚前の姓に戻す場合や、配偶者の親族との姻族関係を解消したい場合の手続き。これらは期限がないので慌てることはない。

 ほかに14日以内が期限なのは、健康保険や介護保険の資格喪失届。市区町村の国民健康保険や介護保険の担当窓口で手続きし、保険証も返納する。健康保険の窓口では、葬祭費の請求なども一緒に手続きするとよい。必要書類は故人の国民健康保険証や被保険者証、葬儀代の領収書、喪主の銀行の預金通帳など。事前に用意しておきたい。

「市区町村役場で、亡くなった後の手続きがしたいと伝えると、どの部署に行ってどんな手続きをしたらよいのかがわかる一覧表をもらえることがあります。こうした表をもとに手続きを進めると、何度も足を運ばずに済みます」(井戸さん)

 故人が生前、病院に入院して高い医療費を支払った場合、高額療養費として払い戻しを受けられるケースがある。自己負担額が直近12カ月で4回以上一定額を超えたら、4回目からは負担額の上限が下がる「多数回該当」の制度もある。還付金は申請しないと受け取れない。領収書をしっかりと整理しておこう。

 故人が年金を受け取っていたら、年金受給権者死亡届を年金事務所や年金相談センターに出す。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が期限になる。(村田くみ)

週刊朝日  2019年1月25日号