政府がなりふり構わず工事を急ぐのは、来年2月24日に辺野古埋立ての賛否を問う県民投票が実施されるからだ。それまでに埋め立てを進めてしまい、既成事実化する腹積もりなのだ。

 県民投票は玉城県政の切り札だが、5日、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市では、県民投票に反対する意見書を可決した。反対決議は、首長が安倍政権と近い石垣市に続き、2例目となる。宜野湾市や石垣市の有権者は、辺野古移設問題に対して意思表示の機会を奪われるのだろうか。

 県民投票条例の制度設計に携わった、前出の武田教授が両市の姿勢を批判する。

「市町村は県の条例で定められた投票事務を行う義務があり、県民投票に反対だからといって拒否できません。市が有権者の投票権を侵害することにもなります。投票が出来なければ、住民から損害賠償請求訴訟を起こされるのは必至でしょう。賛成の人も反対の人も意見表明ができるのだから、県民投票じたいは中立的なものです。それに反対するというのは、首長も議会も住民代表としての職務を逸脱していると言えます」

 日米両政府は「普天間の危険性除去のため、辺野古移設が唯一の解決策」と言い続けているが、それはウソだ。

 普天間飛行場では今年、滑走路や建物の大補修工事が実施されたばかりなのだ。普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学の前泊博盛教授がこう話す。

「研究室の窓から工事の様子がよく見えます。滑走路を厚く嵩上げして、補強工事をしていました。新たな隊舎の建築もしたようです。工事は今年初めに始まって、夏過ぎには終わりました。日米どちらの負担になるのかは現在調査中ですが、300億~400億円くらいかけていますから、返還するつもりはありませんね。以前から、米軍の司令官たちは『辺野古が完成しても普天間は返さない』と言っていました。日本には、米国に対して正面から返還を求める腹の座った政治家はいませんね」

 政府は沖縄の民意を踏みにじる一方で、新基地取られ損のボッタクリには文句の一つも言えないだろうか。(本誌 亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事