マツダスタジアムで本塁打を放ち、ベンチ前で祝福を受ける広島時代の丸 (c)朝日新聞社
マツダスタジアムで本塁打を放ち、ベンチ前で祝福を受ける広島時代の丸 (c)朝日新聞社

 世間を驚かせたFA移籍劇だった。リーグ3連覇の広島の主力・丸佳浩は宿敵巨人へ。10年ぶり17度目のリーグ優勝を果たした西武の主将・浅村栄斗は、最下位だった楽天へ。2人とも同一リーグのライバルチームを新天地に選んだ。

 FAは個々の選手が勝ち取った権利。チームを引っ張った両選手だけに、悩み抜いた末の決断だろう。ただ、ファン心理は複雑だ。「お願いだから出ていかないで」と深く愛されてきただけに、ショックも大きい。巨人移籍決定後、丸の背番号9のユニホームなどのグッズが、ネット上で大量に出品された。

 広島ファンは、FAによる主力選手流出に「またか」の思いだろう。広島がFAで獲得した選手はゼロなのに、移籍した選手は丸を含めて9人。1994年オフに先発の核だった川口和久が、99年オフに不動の4番江藤智が、それぞれ巨人に。2002年オフは金本知憲が、07年オフは広島出身の大砲新井貴浩が、それぞれ阪神に移っている。

 こうした時代と現在とで大きく違うのは、広島の強さ。かつては巨人や阪神が優勝争いを繰り広げ、広島はBクラスに低迷。現在は広島がリーグ3連覇の黄金時代で、巨人は4年連続で優勝を逃した。球団の人気もかつては巨人が断トツだったが、今は違う。

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