「いつか果たせたらよかった」と願ったふたりの母の夢は、わずか2年後にかなう。昨年、藤原と小園はカナダ・サンダーベイで開催されたU―18W杯に、共に2年生ながら出場し、高校日本代表のレギュラーとして1、2番コンビを形成したのだ。

 こずえさんは「まさかこんなに早く実現するなんて」と、喜びに驚きと戸惑いが同居する感情をカナダで吐露していた。

 小園は守備範囲が広く、美しいフィールディングと正確な送球に加え、巧みなバットコントロールでミスショットの少ない選手である。藤原は中学時代に140キロを投げた左腕でありながら、高校進学後は外野手に専念。一発の魅力もさることながら、やはり50メートル5秒7という驚異の走力を武器にしてきた。

「枚方のころから、いつも走り込みなんかで、海斗と恭大はペアで競い合ってきた。お互いにとって最大のライバルなんです」(こずえさん)

「恭大に足で勝ったことは一度もありません」(小園)

 しかし、中学時代は小園の方が全国に名前が知れ渡っており、大阪桐蔭の西谷浩一監督も、当初は小園を熱心に誘っていたとされる。小園はU―15日本代表にも選出されたが、藤原はその選に漏れた。

「それが相当、悔しかったみたいです」と振り返るのが、藤原の父史成さんである。

 ふたりは、オール枚方ボーイズの練習とは別に、史成さんが中心となって球場を借り、関西の有望選手を集めた練習会に参加していた。

「自分の息子だからと甘やかすようなことはなく、厳しく接しました」

 その練習会に参加していたメンバーがすごい。ドラ1となったふたりに加えて、大阪桐蔭の主将を務めた中川卓也、早稲田実業に進み、今回のドラフトでも福岡ソフトバンクから3位指名を受けた野村大樹。他にもこの夏の甲子園に出場した強豪校の選手を何人も輩出していた。

「本当に関西を代表する選手たちが集まり、鍛錬していた。その意識をそれぞれの高校に進んでも持ち続けていたからこそ、みんなが大きく成長したのではないでしょうか」(史成さん)

次のページ
舞台はWBCへ