朝日新聞出版が発行する週刊朝日増刊号「甲子園」。毎夏、高校野球の季節がやってくると、全国の書店やコンビニ、駅の売店などに、球場のスタンドからエールを送るまぶしい女子高生の表紙が並ぶ。
2018年、100回目を数える平成最後の夏の甲子園には、史上最多の56校が出場する。記念大会の表紙を飾ることになったのは――。
●部内一長身の169センチ!
「うれしかったです。でも、本当に自分で大丈夫なのかな」
花咲徳栄(埼玉)に通う3年生の岡田真菜美さん。バトン部に所属する長身の美少女だ。身長は部内一の169センチ。すらっと長い手足は、華のあるユニホーム姿でも映えそうだ。
同校バトン部が取り組むのは、バトントワーリング大会の「ポンポン編成」。いわゆるスティック型の「バトン」ではなく、「ポンポン」を両手に持ちながら、音楽に合わせた身体表現で、美しさや完成度の高さを競う。春、夏、秋と野球部の大会応援にも駆けつけているが、顧問の大石千明さんは「6月に文化祭、8月末に大会、9月から県大会で、勝ち進めば11月に関東大会なんです」と、野球の応援と大会スケジュールの重複に頭を悩ませる。それでも昨年は全国大会へ進み、銀賞受賞の好成績を収めた。
●記憶に残る東海大菅生戦
花咲徳栄といえば、言わずと知れた野球の名門校。昨夏は清水達也(中日)、綱脇慧(東北福祉大)のダブルエースと、西川愛也(西武)ら強力打線で、埼玉県勢として初めて深紅の大優勝旗を手にした。8月5日に開幕する第100回全国高校野球選手権記念大会には、北埼玉代表として出場する。
表紙を飾ってくれる岡田さんは昨夏、1回戦から決勝まで6回も応援し、野球部とともに「日本で最も長い夏」を過ごした。
昨夏の大会で最も記憶に残っている試合が準決勝の東海大菅生(西東京)戦。序盤から点の取り合いになった試合は延長戦に。「自分たちがあきらめてはだめだから、自分たちができる最大の応援をしようと思った。最後にはすごく粘って勝ったので、感動しました」(岡田さん)
そして、広陵(広島)を決勝で下し、悲願の初優勝を飾る。「甲子園に行くだけでも貴重なのに、そこで『優勝』という体験をさせてもらえて、野球部には感謝しています」(同)
●野球部が強豪であることも知らず…
バトン部にはダンスやバレエ経験のある部員が集まる中、岡田さんは初心者だ。中学時代はバドミントン部だった。クラスメートに誘われてバトン部の体験入部に行ったことがきっかけで入部した。
「私はダンスも何もやってなくて、いきなりステップとかやっても全然わかんなかった」
野球部の応援があることは入部後に知った。そのうえ、野球部が強豪であることも知らなかった。
「大勢の前で踊る経験なんてほとんどない。すごく緊張して、球場でもドキドキしながら踊っていました」
●お気に入りは「It‘s My Life」
同校の野球応援曲は60曲以上。ピンク・レディーの「サウスポー」やXJAPANの「紅」をはじめとする定番曲、智弁和歌山の「ジョックロック」などの人気曲に、今年はWANIMA「やってみよう」など5曲の新曲があるそうだ。
そうはいっても、高校野球の1大会の登録メンバーは20人ほど。1人に1曲ずつ応援歌が割り当てられるため、チャンステーマを含めても1大会で使う曲は多くても30曲程度ですよね……と思っていたが、その考えは甘かった。
バトン部では先輩から後輩に全曲のダンスの振りを代々伝える。10年ぶりにある選手の応援曲に採用される曲があっても、10年前と同じように踊れるようにするためだという。だから、入部してからは“試練”だ。全60曲あまりの振りを覚え、7月の甲子園予選までに部内のテストを受けて合格しなければ、チアガールとしてスタンドで踊れない。
岡田さんのお気に入りは「It‘s My Life」。ボディービル大会のBGMなどにも使われる曲で、3年生3人でアイデアを出し合って、筋肉をアピールするポーズを組み込んだ。「(曲の)1、2、3番でチア(の振り)が分かれていて、最後にそれぞれ違うポーズをします。ほかの曲よりもかっこいい振りを作りました」と自信たっぷり。見せ場の振りを入れつつ、全曲一気に覚えていく1年生のために、ほかの曲と同じ振りも織り交ぜ、「ここは○○と同じ振りね」とわかりやすく教えるのもコツだ。
表紙を飾った岡田さんは再び甲子園に舞い戻ってくる。「夏連覇」の偉業に挑むトクハル球児に、全力応援を誓う。
「また今年も優勝してほしい。(昨年の)準決勝みたいな感じで、あきらめないで選手が元気になるような応援をしたいです」