東川哲也カメラマンは、今年の表紙となった岡田さんについて、「実はその前の年も撮っていたんです」。なんと表紙に決まる2年前、まだ1年生の岡田さんまで撮影していた!


「1年生だから、アルプスの後ろの方で踊っていたと思います。強豪校のチアは、『あの子は昨年もいたな』、ってことがありますね」

 そして毎年甲子園を撮影しているカメラマンらしく、こうも続けた。

「表紙として登場し、さらに甲子園にも戻ってくることがいかに大変か! 野球部が地方大会で優勝して、自分もまだ学生としてチアに残っていなきゃいけない。過去には卒業して、大学生になっている子もいましたから。これは“奇跡”ですよね」

 東川カメラマンは極力被写体の女の子に近づいて撮影するという。距離は3メートルくらい。普段は試合写真を撮ることが多いため、表紙候補の撮影はアルプスの雰囲気を味わえる機会とも感じている。「応援の中に入って、ブラバンやチアを体感するとても貴重な時間です」
   
●撮影難しいアルプススタンド 「絶対この子」の確信があった

 もう1人の松永卓也カメラマンは、対照的で、被写体の生徒から5メートル離れ、望遠レンズで撮影している。ただでさえ人口密度が高く、場所取りが難しいアルプススタンド。「あ、あそこにかわいい子いるな、と思って撮りたくても、近づけない」ことも多いという。

 松永カメラマンは「甲子園」を持ち歩き、顧問の先生が近くにいる場合は雑誌や腕章を見せながら撮影目的を説明するという。事前に了承を得ると、学校側から「あの子どうですか」と教えてもらえることも。

 今年の「甲子園」表紙の写真は、昨夏の第99回大会で、松永カメラマンが撮影した。「準々決勝(第4試合・盛岡大付戦)で、夕方に撮った写真です。普段は光がよくないので夕方はあまり撮影しないのですが」

 チャンスが少ない中で撮った写真だったが、この時は撮影しながら「表紙は絶対この子だな」と確信があったという。

「みんなやっぱり日焼けが気になるから、帽子を深くかぶっていて、色白の子が多い。その中で、少し日に焼けてて、かわいいってだけでなく、健康的だと思った」

 ズバリ、その確信は的中。表紙決定会議でも、満場一致で岡田さんが選ばれた。
  
 夏の甲子園「100回」。記念すべき大会に向け、今年の「甲子園」は自信作といえる表紙になった。ぜひ手にとってみてほしい。