ロック、ソウル、ジャズ、ファンク、ヒップホップが混在した音楽性を持つSuchmos(サチモス)
ロック、ソウル、ジャズ、ファンク、ヒップホップが混在した音楽性を持つSuchmos(サチモス)
バンドの自由な発想で生まれた『THE ASHTRAY』(F.C.L.S. KSCL-3062)。初回生産限定盤(同3060~1)は、昨年のZEPP東京での公演を収録した10曲入りDVD付き
バンドの自由な発想で生まれた『THE ASHTRAY』(F.C.L.S. KSCL-3062)。初回生産限定盤(同3060~1)は、昨年のZEPP東京での公演を収録した10曲入りDVD付き

 クルマのCMに使われた「STAY TUNE」、それを収録したアルバム『THE KIDS』(2017年)が絶賛されたSuchmos(サチモス)が、新譜『THE ASHTRAY』を出した。7曲入りのミニ・アルバムだが、期待を裏切らない充実した作品だ。

【『THE ASHTRAY』のジャケット写真はこちら】

 サチモスは神奈川県出身のメンバーを中心に結成された6人組だ。グループ名はルイ・アームストロングの愛称「サッチモ」に由来する。

 フロントマンは、アディダスのトラックトップがトレードマークのヴォーカル、YONCE(ヨンス/河西洋介)。残る5人は、リズミックなリフやカッティングに技を見せるギターのTAIKING(タイキング/戸塚泰貴)、チョッパー・スタイルのベースを持ち味とするHSU(スー/小杉隼太)、ドラムスのOK(オーケー/大原健人)、OKの弟でDJのKCEE(ケイシー/大原魁生)、キーボードのTAIHEI(タイヘイ/櫻打泰平)。

 13年にHSU、OK、YONCEら4人で結成し、15年に4曲入りのEP『Essence』でデビュー。その後、初代ギタリストが抜け、現在の6人組となり、同年にデビュー・アルバム『THE BAY』を発表した。

 ネオ・ソウルのディアンジェロ、アシッド・ジャズのジャミロクワイがヒントとなり、それぞれのルーツを探っていった結果、ソウルやジャズの先人と出会い、グループの音楽に反映させてきた。

 2枚目のEP『LOVE&VICE』のリード曲「STAY TUNE」がホンダのCMに起用され、一躍、脚光を浴びた。彼らにとっては“アウェー”である東京の金曜の夜を皮肉を交えて描いている。

 2作目のアルバム『THE KIDS』では、ロック色を強め、自身の日常の周辺を描くだけでなく、怒りや不満をあらわにした曲も。ロック・フェスに出演した際、多くのバンドがありきたりなスタイルを踏襲するだけだったことへの反発も、同作に反映させたというから面白い。オリコンのアルバム・チャートで2位になり、昨年の日本レコード大賞最優秀アルバム賞を受賞している。

著者プロフィールを見る
小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

小倉エージの記事一覧はこちら
次のページ