では、生まれつきBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異がある人は、どのくらいがん発症のリスクが高まるのだろう。

 現時点では欧米人のデータのみで複数の論文が報告されているため数字に幅があるが、変異を持つ女性が一生のうちに乳がんを発症するリスクは、変異のない女性の約6~12倍、卵巣がんは8~60倍とされている。必ず乳がんや卵巣がんを発症するわけではないが、当事者にとっては無視できないリスクといえるだろう。

■遺伝が疑われるのはどんな場合?

 家族や親族に乳がんになった人がいる女性は、「HBOCの可能性があるのかもしれない」と不安に思うだろう。家族歴で注意すべき血縁の範囲は、同一家系内のうち、父方・母方双方の第3度近親者まで。その中に乳がんや卵巣がんにかかった人が3人以上いる場合には、HBOCの可能性がある。

「発症年齢」にも注意が必要だ。HBOCは、一般的な非遺伝性の乳がんよりも10~15歳若く発症する傾向がある。家系に一人でも20代や30代で発症している人がいれば、疑いは強まる。

 一方、HBOCは女性だけの遺伝病ではないので、血縁者に男性乳がん、50代前後で発症する若年性前立腺がん、膵臓がん患者がいるかどうかもポイントといえるだろう。

(文・谷わこ)

*週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2018」より