実は、気管支サーモプラスティ治療が普及する一方で、「誤った情報が伝わっていると思われる事例」を大島医師は何例か経験している。多いのは、野瀬さんのように薬物治療が正しくできていない状態で治療を希望するケースだが、このほかに、「この治療をすれば完治する」と思って受診する患者もいる。

「この治療では、厚くなった平滑筋は減らせるものの、喘息の原因となるアレルギー体質や、そもそもの気道の炎症を改善させるわけではありません。治療後に薬の使用量を減らせる人もいますが、基本的にはそれまでの薬物治療は継続することになります」(大島医師)

 保険診療が始まって課題も見えてきた。

 その一つは、新たに登場した薬との兼ね合いだ。16年以降、免疫システムに働きかける新しいタイプの薬(抗体製剤)が発売された。基本的な薬物治療だけではコントロールが難しい場合の次の手として、この薬を使うのか、気管支サーモプラスティ治療をおこなうのか、ガイドラインでは決まっていない。

「われわれ医師の間では、抗体製剤を用いたけれど症状が改善しない患者さん、あるいはもともと抗体製剤が効きにくいと予測される患者さんに、気管支サーモプラスティ治療を実施するという考え方が一般的になりつつあります」(同)

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