手術を受ける際は、眼科医選びも重要。多焦点眼内レンズによる水晶体再建術は、先にも紹介したとおり、先進医療の一つ。手術自体は両目で100万円程度かかり、患者負担は大きい。

 その負担も、民間保険会社の「先進医療特約」ならカバーできる。特約に入っていれば保険でまかなえるからだ。金銭的なメリットは大きいが、一方で「必要としないのに多焦点眼内レンズを勧められた」といったトラブルも起きている。

 都内在住の男性(60代)は、見えにくさを感じるようになり、都内の眼科で診察を受けた。担当した眼科医は男性に「先進医療の特約の保険に入っているなら、白内障の治療で老眼も治せる」と強く勧めてきた。眼科医があまりに強引なため、男性は「何か裏があるのでは」と、怖くなって帰ってきたという。

 日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)は、治療の選択肢がほかにあるにもかかわらず、多焦点眼内レンズの説明しかしない例や、「先進医療特約に入ってから来てください」と言われる例などを把握しているという。だが、「本当に必要とする患者さんもいるので、学会では一概に規制できない」(同学会理事長のビッセン宮島さん)のが現状だ。

 こうした点を踏まえ、宮田さんは治療を受ける際の注意点をこう話す。

「見え方の変化なども含めて、とにかく納得するまでわれわれ眼科医に聞いてください。万が一、不具合が生じたときに、その施設で再手術ができるか、たずねておくことも大事です」

 多焦点眼内レンズは基本的に緑内障などの病気がある人や、角膜の形に問題がある人には使わない。眼科医の説明に不安を感じたら、セカンドオピニオンをとることも大事だ。(本誌・山内リカ)

週刊朝日 2018年3月16日号より抜粋