子宮頸がんは30~40代の若い女性に多い (※写真はイメージ)
子宮頸がんは30~40代の若い女性に多い (※写真はイメージ)

 がんは50~60代から増える傾向があるが、子宮頸がんは30~40代の若い女性に多い。出産年齢が高齢化する中、がんの根治性を維持しつつ、妊娠する機能を残す手術が試みられている。

 子宮の入り口(子宮頸部)にできる子宮頸がん。ほとんどは性交渉によって感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因となる。女性の多くは生涯に一度は感染する身近なウイルスで、ほとんどの人は自然に治る。しかし一部の人は感染が持続し、さらにその一部の人ががん化する。

 がんが子宮頸部の表面の上皮内にとどまっているごく早期であれば、腟から挿入した器具でがんを円錐状にくりぬく「円錐切除術」という手術で子宮を残せる。

 がんが上皮内よりも深く進行している場合、子宮を全摘するのが基本だ。進行度によって、子宮だけを摘出する「単純子宮全摘術」、子宮を支えている基靭帯の一部など周りの組織もやや広めに切除する「準広汎子宮全摘出術」、子宮周囲の組織をさらに広い範囲で摘出し、骨盤リンパ節まで切除する「広汎子宮全摘出術」がおこなわれる。

 しかし子宮頸がんを発症する年代のピークは30~40代。妊娠・出産の高齢化もあり、治療後に妊娠を希望する場合は少なくない。

「微小浸潤がん」といって、上皮内よりは進行しているが、広がりが小さく、さらに浅ければ個別に検討し、円錐切除術で子宮を残せることもある。慶応義塾大学病院産婦人科教授の青木大輔医師はこう話す。

「子宮頸がん検診でごく初期のがんや高度の前がん病変が見つかった場合、多くは円錐切除術の条件に当てはまります。検診で早期に見つけるほど、子宮を残せる可能性は高いのです」

 一方、がんが5ミリ以上深く進行している場合、「広汎子宮全摘出術」が標準治療となり、妊娠機能は失われる。しかし同院では、妊娠を強く希望していて、「直径が2センチ以下」「術前の画像検査で子宮以外に病変がない」「組織型が扁平上皮がん、もしくは高分化腺がん」であることを条件に、子宮を温存する手術を実施している。がんがある頸部だけを切除し、残した子宮と腟をつなげる方法で、「広汎性子宮頸部摘出術」と呼ばれている。

次のページ