高齢者や血管年齢の高い人にとって、血圧の大きな変動は要注意だ
高齢者や血管年齢の高い人にとって、血圧の大きな変動は要注意だ
脳卒中イベント発生率(週刊朝日 2017年12月15日号より)
脳卒中イベント発生率(週刊朝日 2017年12月15日号より)
血圧サージによる脳卒中や心筋梗塞を防ぐ10カ条(週刊朝日 2017年12月15日号より)
血圧サージによる脳卒中や心筋梗塞を防ぐ10カ条(週刊朝日 2017年12月15日号より)

 血圧が急上昇する「血圧サージ」に今、注目が集まっている。血圧の変動自体は生理的な現象なので健康な人には問題にならないが、高齢者や血管年齢の高い人にとって大きな変動は要注意だ。脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを高めることにつながるからだ。命を脅かす危険もある血圧サージについて専門家に取材した。

【図表】血圧サージによる脳卒中や心筋梗塞を防ぐ10カ条とは?

「今朝、午前中に救急車の出動が多いと、救急隊と話したばかりです」

 おもむろにこう話しだしたのは、横浜労災病院(横浜市港北区)院長で循環器内科医の梅村敏医師。救急車の出動が必要となる脳卒中や心筋梗塞は、動脈硬化によって脳や心臓の血管が詰まったり、破れたりして発症する代表的な病気だ。こうした病気の原因の一つとなるのが、サイレントキラーとも呼ばれる高血圧だ。

 高血圧といえば、10月29日に放送されたNHKスペシャル「“血圧サージ”が危ない~命を縮める『血圧の高波』~」が波紋を呼んでいる。血圧サージとは“一過性の著しい血圧上昇のこと”で、これが繰り返されることで、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まるというのだ。

 サージとは「急上昇する、急に高まる」といった意味。NHKで取り上げられたことで、血圧における新しい概念のような印象を受けるが、実は専門の医師らは以前から注目していた。

「“モーニングサージ”というもので、時間帯ごとの脳卒中や突然死の頻度を比較すると、朝の6時ごろから正午ごろまでが高い。これには、朝方の急激な血圧上昇であるモーニングサージが関与していると言われているのです」(梅村医師)

 番組では血圧サージのリスクについて専門家が解説し、その予防として家庭血圧計による血圧測定や、非薬物療法としてタオルを軽く握る「ハンドグリップ法」などを紹介している。一方で、高血圧ではない若い男女、つまり、血圧サージがあまり問題とならないようなタイプの人たちに血圧測定をさせ、その3割に血圧サージが見られたという実験結果を提示。“1回でも血圧が135mmHg(単位は以下省略)を超えると血圧サージ”と述べるなど、一部では誤解を与えるような内容もあった。

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