「早朝に血圧が高い人は、起床後にトイレや新聞を取りに行くなどで寒い外気に接すると、血圧がさらに上昇して、脳卒中の引き金になりやすい。また、血圧サージのある人は、入浴で急激に血圧が下がって意識を失い、死に至ることもあります。つまり、動脈硬化が進んでいる人、血圧サージが起こりやすい人は、血管年齢やリスクに応じた生活を心がけることが大切です」(桑島医師)

 朝は目覚めて跳び起きるのではなく、ゆっくり起きる。スケジュールをびっしり詰め込むのではなく、余裕を持って動く。また、朝の急激な血圧上昇は諸外国より日本に多いという報告もある。これは、日本の昔からの家屋は断熱性が不十分であることを物語っている。しっかり部屋を暖めることを重視すべきだろう。

 梅村医師は、深呼吸をすることで血圧が下がることや、血圧が高めな人ほど下がり幅が大きいことを、報告している。

「効果は一時的ですが、朝やイライラしているときなど、血圧サージが起こりそうなときに深呼吸をすることで、血圧の急激な上昇が抑えられるかもしれません」

 降圧薬の使い方にもコツがある。薬の作用が切れるとサージを起こす可能性があるからだ。朝に服用した薬の効果が切れるタイミングが明け方であることが多いため、寝る前に降圧薬を飲んでおくと、サージが抑えられる可能性がある。一度、かかりつけ医に相談してもいいだろう。

 冒頭でお伝えしたように昔から知られている血圧サージだが、新たに“サージの共振を避ける”のが大事という考え方も出てきた。

「例えば、寒い朝に跳び起き、冷たい床を素足で歩いて洗面所に行き、冷水で顔を洗うという場合、いくつもの血圧サージがほぼ同時に起こっている可能性があります。複数のサージが同時に起こると、血圧の上昇の幅が大きくなるため、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクはさらに高まります。自分のサージが起こる行動を知ったら、それが重ならないように気を付けることも大事です」(苅尾医師)

 血圧サージには降圧薬が効かないとも言われる。きめ細かな生活習慣の改善と、リスクとなる持病のコントロールこそ、サージやその先にある脳卒中や心筋梗塞を防ぐ術なのだ。

■血圧サージによる脳卒中や心筋梗塞を防ぐ10カ条
*1~6は冬の間のみ
1 起床時間に合わせて部屋を暖かくしておく
2 床は素足で歩かず、スリッパや靴下をはく
3 目覚めてしばらくは寝床でゆっくりする
4 冷水ではなく、ぬるま湯で顔を洗う
5 新聞を取りに外に出るときは暖かい格好で
6 入浴時には脱衣場を暖めておく
7 薬は効果が24時間以上続くものに。短ければ2回服用する
8 血圧が高いと感じたら深呼吸をして落ち着かせる
9 排便はあまり力まない。便秘をしない
10 月曜日の朝はゆとりをもって行動する

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2017年12月15日号