「血圧が大きく上下することでよく知られているのは、入浴や排便です。寒い脱衣所で服を脱いで熱い風呂に入った直後は、血圧は20以上も上がります。排便でいきんでいるときも血圧は大きく変動します。冷たい水に手をつけたときもやはり血圧は急激に上がります」(梅村医師)

 血圧は季節によって異なり、夏と冬では20ほども違うという報告もある。冬はそれだけで血圧が高くなりやすいのだ。

 では、血圧サージの危険から身を守るにはどうしたらいいか。知っておきたいポイントは二つ。「自分の血管年齢、血管状態を把握しておくこと」「血圧サージを起こすような行動をとらないこと」だ。

 血管年齢が重要なのは、血圧サージは動脈硬化と負の循環関係にあるからだ。サージは動脈硬化を進め、動脈硬化はサージを招きやすい。加齢による血管の変化は10代から始まるため、どれだけ血管年齢の進行を遅らせるかが、血圧サージの予防につながる。

 血管年齢、血管の硬さを知る目安になると桑島医師が紹介するのは、“上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の差”だ(専門的には「脈圧」という)。血圧が140/80だとしたら、その差は60となる。年齢が高くなるほど上の血圧は上がり、下の血圧は下がる傾向がある。血圧といえば上の数値を気にしがちだが、実は両者の差も重要なのだ。

「上の血圧が140以上でかつ、脈圧が70以上の人は血管が硬くなっている可能性が高いので、急激な温度変化やストレスには注意が必要です」(桑島医師)

 血圧以外で血管年齢を知ることも可能だ。例えば、プラークの有無は「頸動脈超音波(エコー)」で確認できる。頸動脈は首の左右を走っている動脈で、皮膚から近くプラークができやすい。この動脈の壁の厚さやプラークの有無を調べることで、全身の動脈硬化の程度が推測できる。

 そのほか、血管の物理的な硬さをみる「脈波伝播速度(PWV)」や「心臓足首血管指数(CAVI)」や、左右の手と足の血圧と血圧の波形を比較することで、血管の硬さと詰まり具合をみる「ABI(足関節上腕血圧比)」という検査などがある。いずれも一般的な検査であり、多くの医療機関で受けられる。公的医療保険の対象だ。

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