ストーブリーグを熱くする日本ハム大谷も、世界基準の選手となってほしい(c)朝日新聞社
ストーブリーグを熱くする日本ハム大谷も、世界基準の選手となってほしい(c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、メジャーリーグのワールドシリーズに登板したダルビッシュ有投手から、米国と日本の野球の違いを指摘し、日本球界に提言する。

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 10月終わりから11月上旬にかけて、日本も海の向こうのメジャーリーグも最高峰の戦いを迎えた。日本よりも一足早く、ワールドシリーズの決着がついた。ダルビッシュ、前田健太が所属するドジャースは第7戦までもつれ込んだ決戦でアストロズに敗れ、29年ぶりのワールドチャンピオンを逃した。

 ただ、大一番でダルビッシュが先発起用されたのは、それだけ球団に大きな評価を得ていたからだ。結果は1回3分の2を3安打5失点(自責4)で敗戦投手となった。日米でダルビッシュを戦犯扱いするのも目についた。だが、大一番で先発を託された日本投手は過去にいただろうか。

 ダルビッシュは「最後に足を引っ張ってしまった。すごく残念です」と話した。世界一請負人として、レンジャーズからトレード移籍した。そんな投手は過去にいなかったはずだ。当初から第3戦に先発するのは、第7戦にもつれ込むことを考えてのことだ。初回に2点を取られたのだが、その時点で、ブルペン待機していたメジャー最高左腕のカーショーに代えるべきだったとの意見もあるだろう。しかし、チームはそれだけダルビッシュの能力の高さを知っていたから続投させた。彼じゃなかったら、第7戦に投げていないし、ましてや2点を先制されても続投という判断は下されなかったであろう。

 本人はまったく言い訳にしなかったが、スライダーが本来のキレ、制球とはほど遠かった。ワールドシリーズのボールはシーズン中のボールとはまったく違う感覚だったとアストロズの投手も証言している。「滑る」と言われるボールで一番影響が出るのがスライダーだ。ダルビッシュにとって、宝刀とも言える球種が意のままに操れなければ、結果は出ない。二回に試合の行方を大きく左右する本塁打を打たれたのは、フルカウントから投げる球がなくなり、直球を投げたのを狙い打たれた形に見えた。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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