さらに、今年フランスから報告された、もの忘れを自覚する人(多数)を3年間追跡した研究でも、複数の予防法に取り組んだ群で、認知機能の低下を抑えることができたという。

 いずれの研究も単一の予防法ではなく、血管リスクの管理と食事、運動、脳トレを組み合わせている。これがポイントだ。

「認知症予防で大事なのは、“すべての予防法に取り組む”こと。ただ、最初からすべてをきちんと行うのは難しいでしょう。食生活が乱れている人は食事の見直しを、運動不足の人は運動をというように、自分が今いちばんできていない部分から始めてください」(同)

●認知症の“困りごと”に答える

 実家にいる母のもの忘れが心配、夫が最近ボケたのは認知症のせい? 医者の探し方がわからない……。病院を受診するほどでもない「困りごと」を気軽に相談できたら──。

 前出の情報サイトを運営するメドピア社のオンライン健康相談サービス「first call」では、そんな悩みに医師が実名で答える。診療行為はできないが、事前登録すれば、パソコンやスマホのテレビ電話やSNSのチャットで、直接、アドバイスが受けられる。

 同サービスの回答者の一人、家庭医・在宅医の田中公孝医師(ぴあ訪問クリニック三鷹院長)は、「認知症やMCIの患者さんやそのご家族、もの忘れで不安を抱える高齢者に活用してもらいたい」と話す。

 田中医師は、義祖母が認知症になり、妻の実家から相談を受けた経験がある。

「相談は、主に『徘徊を始めたけれど、どうしたらいい?』『介護保険って何に使うの?』など。治療計画や方針については主治医とよく話し合っていたようですが、日々ちょっとした不安や疑問が生じるようで、よく電話がかかってきました」(田中医師)

 印象に残っているのは、義祖母の今後をめぐって、ケアマネジャーともめたときのことだ。
「こちらが『ケアマネを代えれば?』と話すと、『代えられるの?』と驚いていました。意外とそういうことを家族は知らないんだと、逆に、こちらの気づきにもなりました」(同)

 田中医師の助言に従ってケアマネを代えたところ、家族の意向を汲んだ提案をしてくれるようになり、その後の介護がスムーズになったという。

 今回、本誌は読者アンケートで相談を募り、同サービスの形式で田中医師に回答してもらった(図)。

「認知症の治療や介護は長期戦です。そのなかで生じる不安や悩みについて、主治医だけではなく、第三者の専門家に相談する。この必要性を私自身、強く感じています」(同)

(本誌・山内リカ)

週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋