「ただただ、そこに彼女は『純粋』に向き合えるのです」

 真央さんとアイスショーで一緒になる振付師の宮本賢二さんは、こう話す。

「誰よりも一生懸命、振り付けを覚えてくれる人。そろそろ練習しようか、とジュニアの選手にもそっと声がけする。多くを語らないけれど、背中で語る人」

 自分に厳しく、芯の強い女性。そんな姿が浮かび上がってくる。

 小塚さんは真央さんのこんな一面も話してくれた。

「真央は練習していても、鼻紙を1枚しか使いません。いつも1枚だけ。1枚使って、二度使いできそうだったら、ボックスの下にはさみまた滑って、それを使います。ファンからたくさんのものをもらっていても、贅沢もしない、無駄遣いもしない。絶対にものを粗末にしない子ですよ」

 スケート靴も大事にする。

「真央は必ずスケート靴もそろえて、靴下もちゃんとそろえている。リンクではぱっと見ると、これが真央の靴だってすぐわかりますよ」

 スケート靴は、エッジがあたると穴もあく。女子の白靴の場合は汚れも目立つ。「でも真央は、白い靴墨を塗ってそれを隠すんです」

 小塚さんが、「真央もう靴、替えたら?」と言っても、なかなか替えない。

 真央さんが大学生のころから、スケート靴のエッジを研いでいる。いつも真央さんが自身で小塚さんに電話でアポをとり、小塚さんのところまで持ってくる。自分のことは自分でやる。靴のケアもリンクの予約も。そこは一般と同じ感覚だ。真央さんの衣装デザイナーの安野ともこさんは言う。

「真央さんの金銭感覚は一般の人と同じだと思う」

 倹約家というのでもない。ただ贅沢をしすぎないのだ。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋