子供は多少の線があっても心配無用。成人になってから、一つの指に黒い線が出たときに気をつけよう。

「全身の皮膚に発疹がないのに、爪だけに症状が出る場合もあります。例えば、爪の乾癬(かんせん)。比較的頻度の高い皮膚病ですが、爪にしか症状が出ない人もいます。診断がつかず、最終的に爪外来に来る方が多い」(同)

 爪乾癬になると爪が変形したり、はがれたりすることもある。良性でも、患者は不便なことが多くなる。

 がん以外だと、爪がもろく薄くなった場合に、貧血や甲状腺機能異常などの恐れがある。肝機能や腎機能の障害でも、爪の色などに影響が出ることがある。色で病気をくくるのは難しいが、「全体的に色調が変わったら、要注意」という。

 爪のトラブルは、手より足が多いだろう。高齢になれば自分で足の爪を切るのが難しくなる。齋藤氏は「足は深爪をしないこと。陥入爪になり、痛みでつらい思いをすることになりかねない。将来変形するリスクも高まります」と指摘する。

 専門家に頼むのもいい。東京都内などにある足の爪切り専門「爪切り屋 足楽」は、中高年の予約が絶えない。フットケアの施術をしながら、スタッフが爪の切り方、足指の使い方、転倒を防ぐ正しい靴選びなどを丁寧に教えてくれる。

 オーナーの中村美紀さんが記者の爪を見て、誤ったサイズの靴を履いているせいで中指と薬指が縮こまり、変形していると指摘してくれた。フットケア大国のドイツで技術を学び、スクールを運営し、爪切り出張も行っているという。

 次に東洋医学の観点からみてみよう。鍼灸師を育てる東京医療専門学校の船水隆広氏に話を聞いた。

「西洋医学では爪は皮膚の一部と考えますが、東洋医学では、筋肉の余りと考えます。高齢者は筋肉が衰えますが、爪も同じ。退化して縦線やへこみが入ります。東洋医学では筋肉は血液で動き、爪は血液で養われると考えます。爪は血液の流れと関係するのです」

 東洋医学では、爪は「肝(かん)」と関係があるとされ、きれいな爪は肝の状態の良さを示す。

「『肝』とは血を巡らす大事な臓のこと。きれいな爪は肝が良い状態。つまり血液循環が良く、全身の血が足りているということです。貧血だと血液内に栄養が不足しており、爪が白くなる。血液循環の悪い人も同様です。形が悪い場合も血の巡りが悪く、血が不足しています」(船水氏)

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