JA共済杯第50回全日本リトルリーグ野球選手権大会優勝の調布リトル=日本リトルリーグ野球協会提供
JA共済杯第50回全日本リトルリーグ野球選手権大会優勝の調布リトル=日本リトルリーグ野球協会提供

 手に汗握る甲子園の季節がまもなくやってくる。その舞台に羨望のまなざしを送るのが、リトルリーグやリトルシニアリーグで活躍する小中学生たちだ。彼らが目指す野球とは。その奮闘ぶりをノンフィクションライター・柳川悠二氏が追った。

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 東京都の調布市、府中市、三鷹市にまたがる「調布基地跡地運動広場」は、小中学生の硬式野球の聖地というべき場所だ。

 この地で練習する「調布リトルリーグ・リトルシニア」は、1967年創設と最古にあたるチームであり、現在は幼稚園生から中学生まで、約200人もの選手がいる。

 これまでに荒木大輔氏(元ヤクルトほか)や武田一浩氏(元日本ハムほか)ら数多くのプロ野球選手が輩出し、今年の高校野球の話題を独占している早稲田実業の“怪物”清宮幸太郎が、早実中学時代に在籍していたことでも知られる。

 中学生対象の調布リトルシニア(以下、調布シニア)の安羅岡一樹監督は、清宮に対する印象をこう振り返る。

「バットにボールを乗っけて遠くに飛ばす力は、過去に見たことがないレベルでした。バッティングの巧さ、身体の柔らかさに加え、パワーもあった。三振した次の打席では相手投手に対応できる能力にも長けていた。勉強も早実でトップクラス。足りないのは、顔のカッコよさぐらい(笑)」

 引き分け再試合となった2006年夏の甲子園決勝、早実対駒大苫小牧を観戦し、野球を志した清宮は、小学生の硬式野球チームである「東京北砂リトルリーグ」に入団。そこで世界一を経験し、中学1年生からは調布シニアに籍を移した。

 同じ学校の仲間と励む小学校の学童野球や中学校の部活動では、柔らかい軟式のボールが使用される。一方、硬式球を使うリトルやシニアは、野球専門家による指導が受けられ、甲子園に出場したいという意識のより高い選手たちが集まる傾向にある。

 興味深いデータがある。今年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出場した侍ジャパンのメンバーを見ると、野手では青木宣親(アストロズ)を除く14選手が中学時代に硬式野球を経験している(投手は13人中4人が硬式経験者)。つまり、小中学生時代の硬式野球の経験が、甲子園出場の、ひいてはプロ野球選手への近道なのだ。

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