安羅岡監督は言う。

「昔と違って、子供たちには公園で仲間と野球をしたり、キャッチボールをしたりする習慣がありません。ですから“野球を知らない”子が多い。打ってガッツポーズをして終わりで、相手の隙を見逃さず、一つでも先の塁を狙う姿勢は欠けている。そういう“賢い野球”をたたき込むのがリトルであり、シニアです。調布シニアだけで、12人の指導者がいます。早くから硬式に触れることで、高校野球にすんなり入っていけるメリットもあります」

 早実で5季連続甲子園に出場した荒木や、同校の和泉実・現監督も調布シニア出身とあって早実とのつながりは深い。

「勉強もできる子は、早実、慶応を目指す。他には都内の強豪校や、宮城の仙台育英をはじめ東北の学校に行く選手も多い。ただ、『調布で頑張って、いい高校に行きたい』という意向は、選手よりも親御さんのほうが強いですね(笑)」

 現在、調布シニアには清宮の弟である福太郎君も在籍している。

「アニキほど遠くに飛ばす力はありませんが、野球センスは負けず劣らず。来年(中学3年生)から投手をやりたいと話しています。アニキとは違う路線で高校野球に取り組みたい気持ちがあるのでしょう」

 調布リトルは昨年、JA共済杯第50回全日本リトルリーグ野球選手権大会を制し、世界大会に出場。だが、シニアは神宮球場で開催される日本選手権で8回の優勝を誇るが、日本一から30年以上遠ざかっている。

「日本一への返り咲き。それが現在の目標です」

 調布基地跡地が東京の聖地ならば、硬式野球が盛んな大阪府の淀川河川敷は、さながら「リトルシニア銀座」だ。毎週末、10チーム以上が淀川の両岸で練習している様は壮観である。

 中でも十三大橋のすぐ近くを拠点とする大阪福島リトルシニア(以下、福島シニア)は、05年9月創立と、歴史は浅い。

 今春、チームの出身者が初めて甲子園の黒土に立った。早実で4番を打つ野村大樹と、優勝した大阪桐蔭で主に一塁を守った中川卓也。いずれも2年生ながら伝統校で主力を担う球児である。彼らが在籍した2年前、関西で無敵を誇った。福山輝彦事務局長が語る。

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