特定健診を受ける人は、年々増加傾向で、特定健診が始まった08年度の実施率は38.9%だったが、14年度は48.6%。約2616万人が受けている。今回、健康寿命を延ばす手段として本誌が注目したのは、この特定健診だ。

「過去の受診者から得た膨大な量のデータを分析した結果、生活習慣病の予防効果や治療費の抑制効果などが認められたのです」

 こう話すのは、健康診断で行う保健指導の第一人者、津下一代さん(あいち健康の森健康科学総合センター長・愛知県東浦町)だ。調査結果を公表した、特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループのメンバーの一人でもある。

 調査では、制度が始まった08年度に特定健診を受けて、特定保健指導の対象になった20万~22万人を分析。特定保健指導に参加した群と参加しなかった群に分けて、09年度から13年度の検査値、医療費などを比較した。その結果を見ると、腹囲や体重、血圧(収縮期血圧)、脂質(中性脂肪)の項目では、参加群のほうが不参加群よりも改善度が高く、血糖(ヘモグロビンA1c)でも、参加群のほうが上昇の程度が緩やかだった。

 また、特定保健指導の5年間は、改善効果が継続していることもわかった。

 健康効果だけではない。医療費については、高血圧、脂質異常症、糖尿病の三つの病気の治療費(入院以外)をレセプト(診療報酬明細書)から算出。08年度をベースに、09年度から13年度の各年度にかかった金額を参加群と不参加群とで比較した。その結果、男性1人あたり8100~720円、女性1人あたり7870〜1680円、安く抑えられていた。

 津下さんは分析する。

「受けっぱなしではダメということです。検査値の意味を理解して、基準範囲を超えていたら、どう改善すればいいのか、保健師さんなどからアドバイスを受けて、生活を見直す。そうして初めて特定健診を生かせます」

週刊朝日2017年4月21日号より抜粋