このほか、リストには、市の選書基準の対象外とされる“タレント本”や“タレント写真集”なども含まれ、納品済みとなっている。

 海老名市教委に、3冊以外にも“類似した風俗店紹介本”などがあることを指摘し、選書基準などについて質問したが、「回答には1週間程度いただきたい」との返答で、原稿の締め切りまでに回答はなかった。

 その後、疑惑が持たれる本の一部を図書館のシステムで検索しても「検索条件に一致する資料がありませんでした」と表示されてしまうのだ。購入して納品されたにもかかわらず、いつの間にか図書館から抹消されてしまった。これまで図書館を長く愛用してきた市民の一人が、こう憤る。

「選書して購入した本なのに、批判されて都合が悪くなると、勝手に抹消してしまう。これでは、アーカイブとして信用できなくなり、図書館の根幹に関わる問題。市民をバカにしているとしか思えません」

 一部報道によると、市教委はその後、計6冊の風俗店紹介本の貸し出しを中止にしたが、公立図書館のあり方としては、不透明なことばかりなのだ。ジャーナリストで『つながる図書館』(ちくま新書)の著者の猪谷千香氏は、懸念する。

「風俗店を紹介した本は、利用者からのリクエストに応えて選書したケースが多いようですが、他の自治体でも貸し出されている。長いスパンで考えれば、その国の社会事情を知る重要な資料という見方もできます。ただ、今回のように、一部の圧力によって排除することは、検閲につながり、図書館が守るべき国民の知る権利を阻害しかねません。なぜこの事態を招いたのか、責任を明らかにすべきです」

 司書の有無さえ疑われるが、この図書館には司書資格を持ったスタッフはいるものの、長年勤務し、市民のニーズを理解するベテランスタッフはわずかだという。

週刊朝日 2015年10月23日号より抜粋