網膜剥離がやっかいなのは、痛みなどの予兆がないことに加え、効果的な予防方法がないことだ。

 網膜剥離を発症してから時間が経てば経つほど、手術をしても元の視力には戻らなくなる。さらに失明リスクも高まることから早期治療が望まれる。

 日本大学病院アイセンター外来医長の森隆三郎医師は、わずかな前兆を見逃さないようにと警告する。

「網膜剥離が起こる前に小さな穴の状態で発見すれば、レーザー治療で網膜剥離への進行を抑えることができます。その状態を知るサインとして、視界に虫のような黒い点やゴミが見える『飛蚊症』が現れることがあります。また同じように、目に光が当たっていないのにフラッシュを浴びたあとのように光の点滅を感じる『光視症』が起こることもあります」

 飛蚊症は、白い壁や青い空を見つめたときに、目の前に浮遊物が見える現象だ。

「急激にハッキリとした飛蚊症が起きたら、それは病気の前兆である可能性が高い。飛蚊症は、煩わしくても生活に支障がない、と放っておく人が多い。しかし、網膜剥離の前兆としての飛蚊症かそうでないかを、自分で見分けることはできません。異変を感じたら『眼底検査』を受けてください」(森医師)

 網膜剥離手術の成功率は8、9割と高まってきている。だが、症例によっては難治例もあり失明リスクがつきまとうなど、大病であることに違いはない。

 事前に起こる、わずかなサインを見逃さないことが肝要だ。

週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋