前立腺がんの治療は選択肢が多く、どの治療法を選ぶのがいいか迷う患者も多いだろう。東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター泌尿器科主任教授の田邉一成医師に、今後期待できる前立腺がんの治療法と治療を受けるための心得を聞いた。

 前立腺がんは患者数が急増してきましたが、治療の選択肢は多く、前立腺の中におさまっているがんの場合は根治できます。治療を受けるにあたっては、手術の多さだけではなく、他の治療もまんべんなく実施している、バランスのとれた病院で診療を受けるべきです。根治を考えると、やはり手術なのですが、前立腺の周りにある神経の温存や、転移している可能性があるリンパ節をきちんと取り切れているかどうかが重要になります。

 また、現在、手術については、ロボット手術を実施しているかどうかも一つのポイントとなります。手術のアプローチは、従来の開腹、5センチ以下の傷から手術器具を入れて行うミニマム創(小切開)、さらに傷が小さい腹腔鏡下とさまざまありますが、腹腔鏡下手術を手術用ロボットで支援するロボット手術は、安全にがんを根治できる上に、術後のQOLも高い手術法だと思います。

 日本では薬事承認されていないのですが、最新型のロボットも開発されており、今後新しいロボットを採用できれば、将来的にはさらに正確な手技の手術が可能になるはずです。

 放射線治療も内照射である小線源療法と、外照射のIMRTが、確実性の高い治療法として確立されています。今後は、抗がん作用の強い重粒子線を集中してがんに照射できる重粒子線治療も期待できると思います。ただし現時点では、全国で4施設しか実施しておらず費用も高額なこと、IMRTと比べるといびつな形の腫瘍に対してうまく照射できないことなどの欠点があります。しかし、機器はこれから発展していくでしょうから、将来的には可能性の高い治療でしょう。

 前立腺がん治療のいい病院を選ぶ基準は、日本泌尿器科学会の専門医教育施設の基幹教育施設のリストを参考にするといいでしょう。また、泌尿器科はさまざまな病気を治療していますので、前立腺がん治療を専門にしている医師が複数人いるところがいいと思います。

週刊朝日  2014年8月15日号