
トルコでの暮らしや体験をユーモラスに描いた人気エッセー漫画『トルコで私も考えた』で知られる高橋由佳利さん。夫は、漫画家生活に区切りをつけようと一人旅したトルコで出会い、現在トルコ料理店を日本で営むタイフンさんだ。夫婦の歴史と重なる漫画が、実は裏で夫婦の危機を起こしていたという。
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タイフン:私は漫画に描かれるのが本当にイヤ!なんです。トルコで漫画業ってそれほどメジャーでないし、彼女もどこかにちょこっと描いてるくらいかな、と。
高橋:昔は「ページが増えてよかったね」とか喜んでくれてた。それが1996年に単行本が出て、けっこう売れたんです。そうしたら巻を重ねるごとに「知らない人が自分のプライベートを知っている!」って、恐ろしくなってきたみたい。
タイフン:もう嫌になって、いつやめるか、いつやめるかと。彼女は、必ず笑いを取りたいタイプ。話には必ず何かオチを入れて、その中で私は必ず笑いものにされる(笑)。でも笑いを取っていい場所と、取らなくていい場所がある。もう少し慎重にやってほしい。
高橋:一時はかなり本気でダメ出しされました。いままでの一番大きなケンカはそれですね。「これ以上、家族のことを描いたら離婚する!」って。やっぱり漫画より家族のほうが大事ですからね。2008年にいったん連載を終えて、2年くらいはストーリー漫画を描いていました。
――その間、トルコ料理店のオープン準備が着々と進む。すると、由佳利さんのエッセー漫画家の血がだんだん騒ぎ始めた。
高橋:最初は、お店のことも「絶対にダメ! 描くな!」って。でも店が忙しくなってきたら、私の漫画のことはどうでもよくなってきたみたい。
タイフン:それが彼女の仕事なのもわかっていますからね……悩みますね。
高橋:ずっと「描いていい?」って言い続けていたら、だんだんテキトーな返事をするようになって「いまがチャンスだ!」と。当時は息子も「友達が読むから描かないで」って言うようになっていた。だから絵コンテを息子と主人に見せて、チェックしてもらってました。でもそれも最初の3回くらいで。まあ、作戦勝ちですね。
タイフン:それにいまは漫画でお店を知って来てくれる人もいるからね。
高橋:この人も、痛しかゆしで、どうしていいかわからないんですよ(笑)。
※週刊朝日 2014年3月21日号