大腸がんは進行の程度により、治療法が異なってくる。腸管粘膜の下の層の深い部分、あるいはさらに深くの筋層までがんが浸潤(がんが広がること)しているものは、おなかを切開する開腹手術や、おなかに穴を開けて器具などを操作する腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術で外科的に切除しなければならない。しかし、粘膜または粘膜下層の浅い部分にがんがとどまり、リンパ節転移の危険性が低いと判断された、2センチ程度までの早期がんであれば、内視鏡を肛門から挿入して検査と同時に腸内でがんを切除する内視鏡治療が可能だ。腹腔鏡下手術と比べても、からだにかかる負担は軽く、利点が大きい。

 新たに開発されたのが、ESDだ。粘膜下に粘性のある液体を注入してがんを長時間浮き上がらせておき、特殊な電気メスで一気にがんを切り取る手法である。ESDは2009年に先進医療(厚生労働省により承認された高度な医療技術)として承認され、今年4月には、腫瘍径2縲鰀5センチのみが対象だが健康保険が使えるようになった。国立がん研究センター中央病院内視鏡センター長の斎藤豊医師によると、早期大腸がんのうちESDが必要になる割合は2割程度だという。

「腫瘍径が大きながんでも、がんの深さである深達度で診ると早期がんのケースは珍しくありません。10センチを超えるようなものでも粘膜表層にあれば、開腹せずに内視鏡下で一括切除できます。5センチのがんで検査から切除手術完了までに要した時間は約80分。4センチ以下の病変なら通常15分縲鰀1時間以内で終了します」(斎藤医師)

※週刊朝日 2012年8月17・24日号