福島原発事故から1年3カ月。南相馬市立総合病院と民間のひらた中央病院(平田村)は、合わせて3万人分の内部被ばく検査の結果をまとめた。子どもたちの内部被ばくはどれほど深刻なのか、甲状腺がんは大丈夫なのか――母親たちが知りたい"真実"がようやく見えてきた。

 南相馬市立総合病院で市民7万人を対象に内部被ばく検査を続けているのは、東大医科学研究所の坪倉正治医師(30)。平田村の「ひらた中央病院」では、日本チェルノブイリ連帯基金理事長の鎌田實医師(63)が財団・震災復興支援放射能安全研究所をつくり、同様の検査を続けている。

 事故の約1カ月後の昨年4月中旬に、弘前大学などのチームが浪江町にとどまっていた住民らを中心に甲状腺内の放射性ヨウ素を測定していたが、福島県が途中で「不安をあおる」として測定を差し止めたため、情報の蓄積ができなかった経緯がある。鎌田医師によると、測定した62人のうち、ヨウ素131は50ミリシーベルト超えが5人、子どもの最高値は48ミリシーベルトだった。厳重にフォローが必要な数値だという。

 一方、坪倉医師がまとめた「内部被ばくの現状」によると、昨年9月には新型のキャンベラ社製のホールボディーカウンターが2台入り、12月までの約3カ月で5324人の内部被ばく量を調べた。高校生以上4745人のうち、セシウム137が体重1キロあたり20ベクレル以上が全体の3.56%、30ベクレル以上は1.43%、40ベクレル以上が0.65%、50ベクレル以上は0.34%だった。

 この数値は今年になって大きく落ち、自家栽培の野菜などを食べ続けているお年寄りを除いて、体重1キロあたり20ベクレル以上は限りなくゼロに近づいている。

 坪倉医師によると、病院の問診で特に母親が聞きたがるのは、子どもの甲状腺がんは大丈夫か、という点だ。現時点では、放射性ヨウ素をどれだけ浴びたか調べようがない。内部被ばく検査でセシウム137の値が高い人は、ヨウ素も被ばくした可能性が否定できないので、甲状腺エコーで定期的な検診を勧めているという。

 ただ、注意しなければいけないのは、小さなしこりなどが見つかっても医師が「A2」(所見はあるが現状では問題ない)とするケースだ。結果は書類で通知されることが多いため、どうしても不安や、不信につながってしまう。

「うちの子にしこりが......、とお母さんたちは衝撃を受けられますが、大騒ぎせず、経過をみて、1、2年後に再受診するなど、注意深く見守るしかありません」(坪倉医師)

※週刊朝日 2012年7月6日号