セヴン/ディノ&フランコ・ピアナ
セヴン/ディノ&フランコ・ピアナ

イタリアの父子ダブル・リーダーのジャズ・オーケストラ
Seven / Dino & Franco Piana (Alfa Music)

 新録新譜のリリース点数において、最も活況を呈して久しいのがイタリアだ。ぼくでさえも素性の知らないミュージシャンの作品が、日本市場に溢れており、それらが一体どの程度のセールスを上げているのか、心配してしまうほどだ。

 今回ご紹介するのは、同国の父子ジャズ・ミュージシャンとして母国ではその存在が知られる、ディノ&フランコ・ピアナ。ヴァルブトロンボーン奏者のディノ(1930~)は50年代からプロ活動を始め、60年代にはイタリアン・ハードバップの代表格となったジャンニ・バッソ=オスカー・ヴァルダンブリニ5に参加。2000年代に入ると、折からの“ヨーロピアン・ニュー・ジャズ”ブームに乗って、バッソ(ts)らとの3管セクステット“イディア6”でハードバップ・リバイバルの動きを加速させた。また息子のフリューゲルホーン奏者フランコ(1957~)とはダブル・リーダーのジャズ・オーケストラでアルバムを制作し、80歳を超えた大ヴェテランになっても健在ぶりを示している。

 これはピアナ父子がこれまでに培ってきた人脈を活用して実現させた、イタリアン・オールスター・セプテット作だ。中心的な配役はメインストリーム・ジャズの歴史を築いてきた新旧の重要人物で、フランコより若い世代も含まれる。さらにハードバップ系には仕分けされない大物の参加が要注目。現代ジャズ・ピアノ界の巨匠エンリコ・ピエラヌンツィが全体の半数で貢献しているのは、価値が高い。「オープン・ダイアローグ組曲」と題した#1~4のすべてで演奏。3分足らずのメランコリックなピアノ独奏曲#1で始まると、それを前奏曲としてアップテンポの4管曲#2へと移行。リーダー作、参加作多数で相変わらず絶好調なファブリッツィオ・ボッソがソロの先頭を切り、ディノ~マックス・イオナータ~フランコのフロント全員が自己紹介を兼ねてソロ・リレー。その後を受け継いだピエラヌンツィが、まさに入魂のソロで貫禄を示すのも頼もしい。#3の無伴奏ピアノ・ソロも効果的だ。この約7分のバラードは楽曲自体が組曲風な場面転換がある構造になっていて、面白い。#4はホーンズとピアノの都会的なアンサンブルが冒頭で楽曲の魅力を印象づける。カップ・ミュートで暴れ回るボッソと、ボッソが演じたセロニアス・モンク曲をピエラヌンツィが発展させる場面は本作ならでは。エンリコ・ラヴァ(tp)唯一の参加曲#10はカリプソ調で、ラヴァ~ディノ~イオナータ(ss)~マンヌッツァ(p)と陽気なソロ・リレーでお祭り気分を演出する。現代イタリアン・ジャズの底力が楽しめる秀作だ。

【収録曲一覧】
1~4. Movimento I~IV
5. Your Smile
6. Eighty And One
7. Dark Eyes
8. Asimmetrico
9. Sunlight
10. Step By Step

ディノ・ピアナ:Dino Piana(vtb) (allmusic.com へリンクします)
フランコ・ピアナ:Franco Piana(flh) (allmusic.com へリンクします)
ファブリッツィオ・ボッソ:Fabrizio Bosso(tp)
マックス・イオナータ:Max Ionata(ts,ss)
エンリコ・ピエラヌンツィ:Enrico Pieranunzi(p)
2011年9月録音