天皇世代最強のアイドルは誰? 政治家、俳優、ミュージシャン…同い年の著名人たち
天皇世代最強アイドル?の大場久美子さん/1990年撮影 (c)朝日新聞社
2019年5月1日、新しい天皇が即位した。第126代の天皇にあたり、「皇太子」から「天皇」へと呼び名が変わった。もっとも、これまで昭和、平成を長く生きてきた国民にとっては、「浩宮さま」「皇太子徳仁親王」のほうが、身近だったであろう。
天皇は1960(昭和35)年2月23日に生まれた。同じ世代には、各分野で活躍する人材がたくさんいる。いわば「天皇世代」で社会に大きくアピールする人たちをまとめてみた。
天皇は1960年の早生まれである。そこで、1960年の1月~12月に生まれた人物、天皇と同じ学年にあたる1959年4月2日から12月31日に生まれた人物について紹介しよう(以下、*印は1959年生まれ)。
政治家には、大臣、党首、派閥の領袖などで大物感を漂わせる人物はあまりいない。安倍晋三首相、志位和夫日本共産党委員長は年上で、枝野幸男立憲民主党代表は年下になる。現職大臣の天皇世代には、片山さつき*がいる。大臣経験者は、野田聖子、小野寺五典(以上、自民党)、長妻昭(立憲民主党)。また、辻元清美(立憲民主党)、元自衛隊幹部の佐藤正久(自民党)など、キャラが立つ政治家もいる。日本共産党書記局長の小池晃、同党副委員長の山下芳生も、天皇と同じ時代を生きた。沖縄県知事の玉城デニー*、宮城県知事の村井嘉浩は存在感を示している。
官僚で天皇世代を大いに落胆させたのが、セクハラ問題で辞任した福田淳一*財務省前事務次官や、森友学園問題の疑惑で矢面に立たされた迫田英典*元国税庁長官だろう。
財界ではソニー会長の平井一夫、三井物産社長の安永竜夫、東京海上ホールディングス専務の小宮暁、星野リゾート社長の星野佳路など。ワタミ創業者の渡邉美樹*もいる。任天堂元社長の岩田聡*は急逝し、ゲーム業界に大きな衝撃を与えた。こうした大企業をときに震え上がらせた投資家がいる。村上ファンドの村上世彰*だ。
学者、研究者の世界を見てみよう。天皇と同年代で世界最先端をゆく研究者といえば、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一*、2014年にノーベル物理学賞を受賞した天野浩だ。2003年、天皇は皇太子時代、島津製作所を訪れた際に田中からレクチャーを受けている。
メディアで発信力が高い大学教員がいる。明治大教授の齋藤孝は『声に出して読みたい日本語』を著した。青山学院大教授の福岡伸一*は『生物と無生物のあいだ』がベストセラーになった。2人はテレビにもよく出演する。東京大教授の本郷和人は日本史関連で昨今、多くの書物を出している。慶應義塾大教授の福田和也、立教大教授の香山リカ、京都大教授の佐藤卓己、日本大教授の広田照幸*なども天皇世代だ。オピニオンの世界では、元外務省主任分析官の佐藤優が時代を読みとく。
メディアへの登場が旺盛な灘高校同級生1960年生まれトリオ、いわば天皇世代トリオがいる。勝谷誠彦(コラムニスト)、和田秀樹(精神科医)、中田考(イスラム学研究者)だ。前警視総監の吉田尚正、元広島県警察本部長の宮園司史といった警察官僚も、勝谷らと同級生だった。昨年11月の勝谷の病死が惜しまれる。
作家もバラエティーに富んでいる。芥川賞作家には目取真俊、多和田葉子がいる。目取真は辺野古基地反対運動で身柄を拘束されたことがある。直木賞作家には石田衣良、宮部みゆき、朝井まかて*、奥田英朗*がいる。ほかにベストセラー作家には綾辻行人、小野不由美、新井素子、天童荒太、佐伯一麦*、久美沙織*、柴田よしき*、長野まゆみ*、二階堂黎人*など。
脚本家で活躍しているのが中園ミホ*で、「Doctor-X 外科医・大門未知子」シリーズや「西郷どん」「花子とアン」を書き下ろした。田渕久美子*も「篤姫」「江~姫たちの戦国~」といったNHK大河ドラマを手がける。
漫画家にはヒットメーカーがそろう。高橋陽一の「キャプテン翼」は、元フランス代表・ジダンも愛読したといわれている。荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」は長きにわたって連載し、シリーズ総計124巻を数えている。きうちかずひろは「ビー・バップ・ハイスクール」で昭和のツッパリ、ヤンキーを描いていた。浦沢直樹は「20世紀少年」で1970年の大阪万博に触れ、同世代の哀愁を誘った。
内田春菊*の「南くんの恋人」はテレビドラマ化されており、小説『ファザーファッカー』では直木賞候補になった。片山まさゆき*は明治大漫画研究会出身で麻雀漫画の雄となり、「ぎゅわんぶらあ自己中心派」「スーパーヅガン」が有名だ。細野不二彦*は「さすがの猿飛」で子どもたちのハートをつかんだ。
庵野秀明はアニメーター、映画監督として活躍し、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズなどを手がけている。
画家の奈良美智*も忘れてはならない。彼の作品は世界中から常に注目されている。
芸能関係を見てみよう。60歳に手が届く年代になったせいか、俳優では大物感を抱かせる人たちがそろう。佐藤浩市、真田広之、生瀬勝久、西村まさ彦、村田雄浩、川野太郎、渡辺謙*、室井滋、紺野美沙子、山村紅葉、浅野ゆう子、田中美佐子*、古手川祐子*など。宝塚出身の涼風真世と黒木瞳、2時間ドラマの女王と帝王である片平なぎさ*、船越英一郎も、映画、ドラマには欠かせない。
アイドルはこの年代にそれほど多くない。上の世代にはピンク・レディーや山口百恵などがいる。「花の82年組」といわれる小泉今日子、中森明菜、堀ちえみ、早見優などは、1965~1967年生まれ。ちなみに天皇が「浩宮さま」時代にファンだった柏原芳恵は、1965年生まれだ。
天皇世代最強のアイドルがいた。大場久美子である。デビュー当時のキャッチフレーズは「一億人の妹」である。平成後半、ネット画像の拡散で瞬く間に注目された橋本環奈の「1000年に一度のアイドル」と勝るとも劣らないほど、大場には熱狂的なファンが多かった。
ほかに高田みづえ、倉田まり子、榊原郁恵*、林寛子*などが活躍し、女子大生タレントとして川島なお美が注目されていた。キャスターとして人気を博したのが久和ひとみ、山口美江である。川島、久和、山口の3人が若くして亡くなったのは惜しまれる。
芸人ではものまね芸に磨きをかけ続ける清水ミチコ、コロッケがいる。
ミュージシャンには氷室京介、大江千里、サンプラザ中野くん、麻倉未稀、杉山清貴*など。氷室は夭折の芸術家、山田かまちの同級生でもあった。テノール歌手の錦織健、オペラ歌手の森公美子*も天皇世代だ。
スポーツ界では、イチロー、中田英寿に匹敵するような傑出したアスリートは見当たらない。プロ野球では「炎のストッパー」といわれた津田恒美(広島)のほか、小松辰雄*(中日)、川口和久*(広島、巨人)、松永浩美(阪急、阪神、ダイエー)、平田勝男*(阪神)など。監督経験者には西村徳文(ロッテ)がいる。
サッカー界では、Jリーグ開幕時に天皇世代の選手たちが30代半ばで現役を引退していたなか、水沼貴史(横浜マリノス)が活躍していた。陸上競技のマラソン選手では、谷口浩美が「こけちゃいました」、中山竹通*が負傷した瀬古利彦に対し、試合に「這ってでも出てこい」と名セリフを残している。ボクシングでは赤井英和*、新体操では山崎浩子、女子プロレスではダンプ松本がいる。
天皇と同世代の著名人をざっと眺めてみた。これまでは「皇太子と同年代なんだ」と意識していただろうし、これからは「そうか、天皇と同じ年なのか」と感慨深く思うこともあるだろう。まもなく還暦を迎える天皇世代には、まだまだ現役でがんばってもらいたい。(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫、文中敬称略)
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2019/05/20 17:00