大学に通うため奨学金を借り、学業に支障をきたすレベルでバイトをしなくてはならない学生がいる。本来、勉学というのは学生自身を知的にするだけでなく、卒業後の彼/彼女が出て行く社会を豊かにすることにも繋がるのだから、国を挙げて応援してもいいようなものだが、実際は違う。財務省が国立大の授業料を引き上げるよう提言したことからも分かるが、いまや自己責任と受益者負担の名のもと、学生がリスクを背負うのが当たり前の時代。苦学の甲斐あってちゃんと仕事に就けるのならいいが、長引く不況がそれを許さない。じゃあ中卒・高卒で働けばいいかといえば、そんなことはない。就職活動で下位校の学生が差別される「就活フィルター」があるのだから、大卒でない学生は、より大変な思いをすることになる。
 この状況をもっともシビアな形で体現しているのが、風俗で働く学生たちだ。ノンフィクションライターである著者が取材した学生は、有名大学からFランク大学まで、男も女もいる。大人数をリサーチしているわけではないが、どんな学生にも風俗で働く可能性があると思わせるには十分だ。なお、性的サービスに従事する若者の話を読んで、エロい気分に浸ろうと思っているならやめておいた方がいい。どれもこれもキツい話ばかりだから。
 苦学生を助けるためにあるハズの奨学金は「利子で利益をあげる金融ビジネス」「実態は単なる学生ローン」だという。だから著者は「通学制の大学に進学をしない」ことを勧めざるを得ない。それが生きる知恵とは言え、学びたい者が妥協しなくてはならないなんて、切なすぎる。著者が警鐘を鳴らすように、この国の教育システムはおかしいし、わたしも大学教員のはしくれとして、何とかせねばと思うも、ほかならぬこのわたし自身がいまだウン百万円の奨学金を返済中の身。教わる方のみならず、教える方も借金まみれ。泣きたくなるような現実である。

週刊朝日 2015年12月4日号