工・理工学部で初年度納付金が最も安い、豊田工業大(撮影/掛祥葉子)
工・理工学部で初年度納付金が最も安い、豊田工業大(撮影/掛祥葉子)

 コロナ禍で経済的に苦しい大学生の問題がクローズアップされているが、大学の学費は家計に与えるインパクトも大きい。そこで、授業料や入学金が抑えられる大学に注目してみたい。9月2日発売のAERAムック『就職力で選ぶ大学2022』(朝日新聞出版)から抜粋して紹介する。

【ランキング】初年度納付金が安い大学ランキング<学部別、計2ページ>

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 大学の入学時には、入学金のほか、1年間の授業料、施設・設備費などを支払う必要がある。これを初年度納付金というが、その額は大学や学部によって大きく異なる。

 表は、国公立大を除く、理系学部の初年度納付金が安い大学ランキングだ(朝日新聞出版『大学ランキング2022』から)。

 工・理工学部で初年度納付金が最も安いのは豊田工業大だ。工学部だけの単科大学で収容定数376人(2021年)と小規模な大学だ。

 同大の初年度納付金は98万2000円と、100万円を切っている。文部科学省の調査によると、19年度の私立大理科系学部の初年度納付金平均額は、154万9688円だった。


 授業料は国立大並みに安い。国立大の授業料は、文科省が決めた標準額である年額53万5800円に基づいて各大学が独自に決定している。東京工業大は63万5400円、千葉大、一橋大が64万2960円だが、私立の豊田工業大は年間60万円。それらの大学よりも安いのだ。

■トヨタの資本で教育環境も充実

 なぜ、学費を安くできるのか。それには大学創設の背景が影響している。同大はトヨタ自動車が社会貢献活動の一環として1981年に設立。同社からの財政的支援により、教育環境も充実している。校舎面積の広さは学生数500人以下の大学でトップだ。学生部長の齋藤和也教授は言う。

「本学の特徴は研究志向。研究のための施設や設備は、小規模大学とは思えないほど充実しています」

 産学連携も盛んだ。企業派遣講師による講義や実習があり、研究室では企業との共同研究に取り組んでいる。学生は1、3年次に長期インターンシップを実施。社会とのつながりが深いため、卒業後の進路をしっかりと考える学生が多く、就職希望者の就職決定率は開学以来100%だ。

「名古屋圏の学生は地元志向が強いので、トヨタ関連の就職が半分以上を占めています。ただ最近は情報通信や家電、化学メーカー、インフラ関連など業界も多様化しています」(齋藤教授)

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理学部で最も安いのは日本女子大