奨学金の問題点について「ステークホルダーが少ない」と分析する松野さん(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
奨学金の問題点について「ステークホルダーが少ない」と分析する松野さん(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

■「国民に対する説得力を増すための科学的、客観的な政策」を研究したい

――いまの社会はマイノリティーの意見が反映されていないと思いますか。

松野:政治の勉強を志している者としては、かなり思うところはありますね。そもそも社会の仕組みを見たときに、マジョリティーの主張していることをやるのが当たり前という環境じゃないですか。私はそこを政策的なアプローチで変えたいという明確な思いがあります。特に日本では、感情で問題を分析して政策をつくりがちです。感情はマジョリティーによりがちですし、流動的なんですよね。

松本:うん。

松野:ある時はこう、あるときはこうと言って整合性がないこともありますし、感情は人にもよって違うのでほかの人の感情に当てはまるとは限らない。政策は広く国民に受け入れられなければならないと思っているので、完全に除外すべきとは思わないのですが、感情は政策形成のなかであまり大きな役割を占めるべきではないと思います。

 これから必要となるのは、国民に対する説得力を増すための科学的、客観的な分析。ただ同時に人は動物なので、どれだけ科学的根拠がある正しいことを示したとしても、それを感情が受け入れないと政策は浸透しない。このバランスを探っていけば、結果的に、多数少数関係なく、本当に社会のために必要なことが政策として実行できるのではないか。これが私が大学で研究したいことです。

■「障がいを包摂して不便さを感じさせなくする技術」を開発したい

松本:私も今は世界的にマイノリティーの声が採用されない社会だとつくづく思っています。たとえば、目が見える人が見ることのできるデバイス、耳が聞こえる人が聞くことのできるデバイスはありますが、そこでは目も耳も不自由な人が排除されているなと思うんです。盲ろう者の方は、指と指を触れあわせる「指点字」という方法でコミュニケーションを取るのですが、コロナの状況で接触できないとなったら、新たに別の代替手段としてタイプライターとかキーボードとか、指点字以外の方法を習得しないといけない。人間が、技術に対して適応しなくちゃいけないんですよ。

松野:うん。

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「何かができないことイコール障がいなのではなく…」