東京新聞の望月衣塑子記者(撮影/小山幸佑)
東京新聞の望月衣塑子記者(撮影/小山幸佑)

 マイナ保険証の問題だってそうです。役所の手違いによって、病歴とか健康診断結果のような命に関わる個人情報が、赤の他人に筒抜けになる事態が多発している。政府が「来年秋には今の健康保険証を廃止する」なんて無理なスケジュールを打ち出した結果、約6000人分のデータを職員5人が手作業で入力するという悲惨な事態に陥っている自治体があります。起きるべくして起きているミスという印象ですね。

(デジタル大臣の)河野さんが「自分自身を処分します」などと宣言してパフォーマンスしたところで、トラブルは今も相次いでいます。岸田さんは最初、総裁選での宿敵だった河野さんを、いずれ問題が噴出するであろうデジタル庁にわざと置いたのかもしれませんけど、今の支持率を見ると、河野さんに責任をなすりつけることには失敗していますね。

■岸田首相が重視しているもの

――岸田政権が、国民の生活よりも重視していることとは?

 軍拡です。岸田さんの一見マイルドな感じに期待していた女性たちは、がっかりしていると思いますよ。安全保障や経済成長のための先端技術支援に年間5000億円規模で税金を出資すると提言したり、防衛産業において経営が苦しい企業があれば、その設備を税金で“国有化”して支援する法律を通したり。

 去年の秋に開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の内容を見たら、岸田さんの言う「新しい資本主義」って、軍産学複合型国家を目指そうという話なのです。アメリカのような、巨大軍事企業が膨大な雇用を抱えて戦争なくして経済成長できないようなシステムって、憲法9条を持ち、平和主義を掲げる日本が拠って立つべき在り方ではないですよね。たとえ一時的に潤ったとしても、国の長期的な発展につながるとは思えないし、世界を幸せにすることもありません。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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