※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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がんの一種であるGIST(ジスト)は「消化管間質腫瘍」といわれるもので、胃に多く発生するが、胃がんとは異なる。GISTの治療方法は、手術と薬物治療が基本となる。患者数が少なく治療に慣れていない病院も多いため、確実な診断や治療には専門医のいる病院を受診することが望ましい。

【表】胃のGISTと胃がんの主な違いとは?

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 GISTは、発生率が10万人に1~2人程度といわれる希少疾患である。主に胃や小腸、大腸などに発生するが、日本人の場合は胃のGISTが最も多く、患者の約7割を占める。

 一般的な胃がんや大腸がんは粘膜から発生するが、GISTは粘膜の下にある筋肉など間質と呼ばれる部分に発生する。健診などで受ける通常の内視鏡検査では、粘膜の下にある腫瘍(粘膜下腫瘍)と診断されることが多い。

 粘膜下腫瘍にはいくつかの種類があり、GISTかどうかを確実に診断するには組織を採取しておこなう生検が必要だ。採取した組織の免疫染色をおこない、KITやDOG1というタンパク質の発現が陽性であればGISTと診断される。悪性度の高いGISTであれば、進行が速く命に関わる場合もあるため経過観察や治療が必須となる。

 GISTの治療は、手術での切除が基本だ。大きさが10センチを超えるなど非常に大きく、切除することで胃や周辺の臓器の機能が損なわれるような場合には、手術の前に薬物治療をおこなうこともある。また、発見時にすでに他の臓器に転移していた場合などでは薬物治療が主となる。

■できた部分だけ取る局所切除が標準

 胃のGISTの手術は、一般的な胃がんの手術とは少し異なる。胃がんの場合、一般的に高い確率でリンパ節に転移があるので、腫瘍を中心に周辺のリンパ節も切除することが必要だ。一方GISTでは、リンパ節転移が非常にまれなためリンパ節切除の必要がなく、GISTができた場所だけの切除ですむ。大阪大学病院消化器外科准教授の黒川幸典医師は次のように話す。

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胃がんよりも手術が難しくなるケースも