大阪府庁
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 大阪府は、府内在住のすべての世帯を対象に、段階的に高校の授業料を無償化する方針を固めた。親の所得や子どもの数、私立・公立の別を問わない「完全無償化」に、ネットでは「革新的な政策だ」「大阪以外の自治体でも実施してほしい」という声があがる一方、「他の地域との教育格差が生まれるのでは」などの反応もある。この政策をどう評価すればいいのか。財政、教育格差の専門家に聞いた。

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 現在大阪府で子どもの数にかかわらず高校授業料が無料となるのは、私立高校の場合、世帯年収590万円未満の世帯のみ。3人以上の子どもがいる場合は、年収800万円未満なら無料になる。ただし府外の私立高校に府内から通う場合はそもそも対象外だ。公立高校についても所得制限があり、月額授業料と同額の支援金9900円を受け取れるのは、世帯年収が910万円未満に限られる。

 このほど大阪府の「戦略本部会議」が公表した案によると、来年度から段階的に所得制限をはずし、2026年度には完全無償化するという。府内の公立高校、私立高校だけでなく、府外の私立高校も対象となる(ただし入学金は無償化の対象ではない)。さらに、大阪公立大学の授業料についても、26年度までに無償化する方針だ。府はこの制度案を「8月に決定し、来年度予算案に盛り込む」としている。

 施策の狙いはどこにあるのか。

「大阪府のすべての子どもに、自らの希望や能力に応じて学校選択ができる機会を提供したい。さらに子育て支援策として世帯の負担を軽減できれば」(府教育庁私学課の担当者)

■年に約427億円が必要、実現可能?

 完全無償化により「年に約427億円が必要となる見込み」(同)だというが、財政的に実現可能なのだろうか。財政政策に詳しい小黒一正・法政大学教授(経済学)はこう話す。

「大阪府は維新による行財政改革がここ十数年で施され、予算に若干の余裕が出てきています。現在も年間約160億円が高校生の授業料支援に使われている状況ですが、追加で約200億円程度が必要になってもまだ余裕があり、財源的にも不可能ではないと思われます」

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今回の政策の財源は?