最後は、母親は同じながら、父親違いの異色兄弟を紹介する。77年オフにヤクルトにテスト入団した伊東克明(野村克晃)と79年オフに広島入りした野村克彦だ。

 察しの良い読者ならもうお気づきだろうが、2人は現在の団野村、ケニー野村両氏で、母は野村克也氏夫人の沙知代さん。ヤクルト、阪神巨人楽天でプレーした野村克則は父親違いの弟になる。

 ちなみに2人は、75年9月に多摩川で行われた巨人の新人テストを受験し、ともに1次テストに合格している。

 同年9月15日付の報知新聞によれば、当時18歳の兄・伊東克明は三塁手志望、16歳の弟・克彦は捕手志望だったという。

 米・カリフォルニア州立理工科大への進学が決まっていた兄は「もしテストに合格したら、アメリカには行きません」とキッパリ。高校在学中の弟も「受かったら高校を辞めます」と兄弟揃って巨人入りを目指していたが、夢実現には至らなかった。

 その後、ヤクルト入りした兄は4年で退団。広島入りした弟は82年に日本ハムに移籍し、計4年間プレーしたが、ともに1軍出場がなかったことから、2人が元プロ野球選手だったことを知らないファンも多いはずだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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