噴火が危惧されている富士山
噴火が危惧されている富士山

 富士山の噴火を想定した避難訓練などの対策が、周辺自治体で進んでいる。2004年に政府が出した試算によると、富士山が大規模に噴火した場合、経済的被害額は2・5兆円。一方、専門家からは100兆円、200兆円になるという指摘もある。毎年のように噴火リスクが指摘されているが、なぜ噴火すると言われるのか。今年に噴火する可能性について専門家に聞いた。

【表】意外と多い? 有史以降の富士山の噴火活動はコチラ(2枚)

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 富士山は休火山と学習した人もいるだろう。しかし、現在は、活火山に分類されている。

 かつては「現在噴火を繰り返している火山」を活火山、「過去に噴火したがしばらく噴火していない火山」を休火山、「噴火記録がない火山」を死火山と分類していた。これに従えば、富士山は1707年に「宝永の大噴火」を起こしたことが記録されており、300年間休んでいる休火山だ。

 しかし、死火山と広く考えられていた御嶽山(長野・岐阜県境)が1979年に噴火した。これを契機に火山の分類について見直しの議論が進み、直近では2003年に気象庁の「火山噴火予知連絡会」が、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と再定義した。休火山、死火山という分類は使われなくなっている。

 それでは、噴火の恐れがあるとされる富士山になんらかの予兆が出ているのか。

 気象庁による富士山の観測データ(下グラフ)によると、地殻が破壊されたときに生じる「高周波地震」の回数は21年に98回、22年は12月25日までで82回になっている。また、地下のマグマとの関連で起きると言われる「深部低周波地震」の数は21年に88回、22年に140回と増えている。

 マグマの動きによって変化が生じるといわれる地殻変動はどうか。防災科学技術研究所が公表している観測データ(下グラフ)を見てみると、富士山頂から北側にある富士吉田市(山梨県)の観測点までの距離が5センチ程度伸びている。他方で、富士山頂の東側にある御殿場市(静岡県)、南側にある裾野市(同)の距離は一度は伸びながらも、その後、縮んでいるのがうかがえる。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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なぜ「いつ噴火してもおかしくない」のか?