2回目は、東日本大震災の4日後、11年3月15日に静岡県東部でマグニチュード(M)6・4の地震が起きたときだ。震源は富士山直下で、同県富士宮市では震度6強が観測された。気象庁によると、この地震で長さ約6キロ、幅約10キロの断層が、最大で約1メートル上下に動いたと見られる。断層が大きく動いたことで岩盤が割れ、マグマの通り道に発展する恐れがあった。
 本多さんはこう指摘する。

「2回とも噴火はしませんでしたが、多くの専門家が危機感を強めました。低周波地震が増えたり、マグニチュードの大きな地震が近くで起きたりしたら即噴火、ということはないですが、地震学的には警戒すべき現象だと考えられています」

 では、23年に富士山が噴火するシナリオは考えられるのか。

「直近では、南海トラフ地震が起き、富士山が噴火するシナリオは考えられます。宝永の大噴火のときは、噴火の49日前に、南海トラフで『宝永の大地震』が起きているからです。ただ、必ずしも連動して起きるとは限りません。また、富士山のマグマはサラサラとしており、岩盤を広げゆっくりと上昇する粘性の高いマグマと比べて、前兆が捉えにくいとも言われています。『不意打ち噴火』とならないよう、いつ起きてもおかしくないという心構えを持っておくべきです」(本多さん)

 富士山が活火山という状況もうなづける。

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら