焼きの工程だが、焼いているように見えないハッピーターン(画像=亀田製菓提供)
焼きの工程だが、焼いているように見えないハッピーターン(画像=亀田製菓提供)

 コラボ商品の陰には、あの味の再現に挑み、人知れずしょっぱい涙を味わったかもしれない担当者たちの苦悩と努力があった。

 1976年に誕生したハッピーターン。堅焼き・醤油味という従来のせんべいのイメージを覆そうと、パウダーを使って甘じょっぱい味に仕上げた。個包装もキャンデーなどを参考に、ひねる形を採用した。米菓でひねるタイプの包装は、今でもとても珍しい。

 当時は第1次オイルショックで世の中は不景気。お客さんに幸せが戻ってくるようにと願いを込めて、「ハッピーターン」の名前が付けられた。

 それから46年。近年も、売れ行きに甘えずブラッシュアップを繰り返している。

 2005年に、生地の表面の粉が落ちにくくするために小さな溝を作った。同社では「パウダーポケット」と呼んでいる。その後もポケットの数を増やしたり、溝を大きくするなど、パウダーをたっぷり味わってもらうために改良を重ねた。

 2019年からは、パウダーをまぶした後、コクのある味わいをシャワーのようにふりかける「ハッピーシャワー製法」を開発した。ハッピーターンならではの甘じょっぱい味わいをより楽しんでもらうためである。

 個包装にも、「見つけたあなたは超ラッキー」と書かれた「当たり」がある。遊び心も忘れない。

 アイスクリームのディップにするなど、人それぞれの楽しみ方があるハッピーターン。活躍の場は多様だ。

 ところで、同社のお客さま相談窓口には、こんな要望が寄せられることがあるという。

「ごはんにかけて食べたいから、粉だけ売ってください」

 それはかなわぬ夢だが、ハッピーパウダーには、企業や消費者をやみつきにさせる秘密の力があるのだろう。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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